「ねぇあずちゃん。」
「ん?どうしたの?」
雪が深刻そうな顔でそうきりだした。
「私って顔に出やすいかな?」
「うん。」
「うなー。即答だー。」
梓の即座の回答に雪は変な声をあげながら机に突っ伏した。効果音をあげるならへにゃりだ。
「急にどうしたの?」
そんな彼女に即答を返した梓が再び声をかけた。
「昨日ね?」
「うん。」
「帝光の友達と遊びに行ってたんだけどさー。」
「何か言われたの?」
梓の眉間に少し皺がよっているが彼女はそれに気付かず、話し続ける。
「んーにゃ。違うよー。それだったらどんなに良いことか…。」
「ならどうしたの?」
いつもニコニコしている雪がこんなになるのは珍しい。いや、1ヶ月以上一緒にいて、初めてかもしれない。
「マネージャー、受けたじゃん?」
「えぇ。私は今でもとても嫌だけどね。」
マネージャーという言葉に梓の眉間の皺が濃くなった。
「幼馴染みにね?言うの忘れてた。」
うわぁ、と雪が再び頭を抱え込み机に沈んだ。しかし、梓は
「はぁ?」
意味がわからない。
「幼馴染みぃ?」
予想もしていない雪の言葉に梓は理解が追い付かない。と言うかわけが分からない。
「何で幼馴染みに言ってないぐらいでそんなに悩んでるの?」
「うー。昨日ね、遊びに行った子に怒るかな?って聞いたら、怒るでしょ。って言われちゃったの!」
「何でそれぐらいで怒るの?」
あれだけマネージャーになることに反対していた梓の台詞とは思えない。
「分かんないけど多分、絶対怒るの!で!聞くところによると、スッゴい怖いらしいの!」
彼女の顔は何だか危機迫っている。
「らしいって喧嘩とかしたことないの?」
梓はまずそっちに驚いた。幼馴染みというのは幼い頃からずっと一緒にいる存在のことだ。そんな幼馴染みと喧嘩した事がないなんてあり得るのか、と。
「うん。そんな真剣な喧嘩したことない。」
「それはそれで凄いわね…。」
「って違うよ!問題はそんなことじゃないんだよ!」
雪がそう言い、机をばんっと叩いたところで梓がはたと気づいた。
「そういえば、顔に出やすいことと幼馴染みが怖いことの何が関係があるの?」