「すいませんでした。」
「え?」
「初め、あんなこと言って……。そんで、ありがとうございました。」

赤也の突然の謝罪に何故謝られたのか分からず目を白黒させていた雪に、赤也が言葉を付け足す。

「あぁ、別に気にしてないよ。心配だったんだよね、先輩たちが。」

雪の優しい言葉にまた涙腺が弛む。

「っす…!」
「わ、な、泣かないで?」

赤也の涙に雪がわたわたしだす。本当にさっきとは別人だ。

「あと、…勝った者が正義って言葉も嬉しかったっす。」
「?」
「俺の勝ちは誰にも肯定されたこと、無かったから…だから嬉しかったっす!」
「ふふ、なんかきーちゃん見たいな話し方だなぁ。」

「き、きーちゃん?」

「ん、あぁ気にしないで。
勝ちはどんな形であれ勝ちなんだから、勝ったら胸を張ればいいんだよ!」

「ありがとうございます!」

何だか今なら赤目にならずに試合できそうだ。


「さ、部活始まってるだろうし、一緒に幸村君に怒られに行こっか!
ってその前に怪我してない?大丈夫?」

「大丈夫っすよ。
行きましょう、雪先輩!」

何だかあそこまで頑なにこの優しい人を拒否していた俺が馬鹿みたいに思えた。

「で、何で二人してこんなに遅刻してきたの?」

目の前に鬼がいる。何でさっきの自分たちは笑顔で「怒られに行こっか」なんて言っていたのだろう。

「私も、とても心配いたしましたのよ?」

麗奈の心配そうな表情に心が痛む。

「てっきり、そこの海藻に何かされたのかと…!」

麗奈の顔の迫力に赤也の肩がびくりっと跳ねる。雪はさりげなく視線を反らし見なかったことにした。

「えーと、…親睦を深めてた?」
「何で疑問形なの?」
「雪先輩と親睦を深めてたっす!」

赤也が慌てて断定した。

「!…へぇ。」

赤也と雪は二人で手を取り合い、がたぶる震えている。幸村、怖い。

「ごめんなさーい!」
「もうしないっす!」

二人とも既に軽く涙目である。


「……はぁ、分かったよ。その代わり、二人共コート周り10周ね。」
「ええ!私も?!」
「ね?」
「いえっさー!」

幸村の余りの怖さに二人とも全速力で走りに行った。

「名前で呼んでいたな。」
「ふふ、赤也もやっと気づいたんだろうね。」
「何があったのか聞かなくても言いのか?」
「二人とも話したくないみたいだしね。このままなんともない様ならそれでいいよ。」

そう柳と話ながら走っている二人を見つめる幸村の顔はすっかり部長の顔だった。
仲直り
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