「なっ?!て、てめぇ!」
もう1人の男が逆上し殴りかかるが、
「だから、触らないで。」
先ほどの男と同じようにのされる。
残った男は目の前の光景が信じられず、足をがくがくさせている。
「さっき聞いてたんだけど、何か勘違いをしてるよ君たち。」
彼女の声が驚くほど通る。
「言ったよね、『あんなテニスでしか勝てない癖に』って。」
彼女が発した言葉は、先ほど男たちが赤也のプレースタイルを馬鹿にした時のものだった。
「違うよ。
勝った者が、正義だ。それを癖に、なんて貶す権利は君たちにはないよ。」
彼女の言葉は驚く程力強くて、それは同時に赤也がずっと求めていたものだった。
キレると何をするかわからない、自分のプレースタイルに悩んでいた。
でもそこまでして勝ちたかった。
そしてそこまでして手に入れた勝利を誰かに肯定して貰いたかった。
勝ち方じゃなく、自分の勝利、を認めて欲しかった。
だから…、誰も認めてくれないから、意地になって赤目になってまで勝利に固執したんだ。
赤也の瞳から、無意識に透明な何かが流れる。
「…っ」
「私、こういうの嫌い。自分は何もせずに、お門違いな妬みばっか向けるなんて行為が、1番嫌い。」
彼女の顔が苦々しく歪む。
「ねぇ、」
「「「ひっ!」」」
男たちがあまりの彼女の威圧感に声をあげる。
「今度こんなことしたら、許さないから。
分かったら、消えて。」
彼女のその言葉に男たちは逃げるように3人もつれ合いながら去っていった。
「はぁ、…大丈夫?」
男たちが去った後、俺に向けられた笑顔は驚く程柔らかかった。
「どこも痛くない?」
「なんで、何であんな態度とった俺を助けたんだよ?!」
(何で、どうして、あんな言葉をくれるんだよ…?!)
マネージャーは一瞬きょとん、としてから口を開いた。
「私ね、頑張ってる人が好きなの。」
マネージャーの口元が楽しそうに弧を描く。
「君は、とても頑張ってた。あのメンバーの中で1人だけ後輩で、でもその差を埋めようと、必死だった。
だからだよ。だから、彼らが許せなかった。」
まぁ3日しか見てないけどね、悪戯に笑いながら彼女はそう笑った。