「雪先輩!球だしお願いできますかー?」

あれから3日たって、名前で呼ばれるほど後輩や同級生たちと仲良くなった。
それは雪が贔屓をせず、真面目に仕事をしているからと言うのもあるだろうけれど、一番はやっぱり人柄だろう。
それに、怪我をしている人や体調が悪い人にもよく気付く。

「洗濯終わったしいいよ!」

ドリンクは桂木ちゃんが作ってくれてるし、と雪は快諾した。

「何かボールが小さいって新鮮だなー。」

「何だよ、それ」

隣で雪の独り言を聞いていた同級生が笑う。

「ずっとバスケ部のマネしてたからさぁ、何か変な感じー。」

「あぁ、確かんなこと言ってたな。」

「テニスもテニスで楽しいよね!ほら、君も青春の汗を流してこーい!」

「ぶは、なんだよそれ。
まぁ行ってくるわ。」

ボールをきちんと出しながらちゃんと練習を促す。皆何だか楽しそうである。

その頃、赤也は機嫌が悪かった。

「っくそ!」

自然と馴染んでいる吉田という女も、仕事を真面目にこなす桂木も気にくわない。何で誰も疑わないんだよ!

本当は3日見ていて、二人が自分の思っているような人間ではないことぐらい薄々気づいている。けど、今までの経験と自分のプライドが謝るなんて行為を許そうとはしない。

「あーいらいらするっ!」

どうしろってんだ!


横のコートで楽しそうに練習をする平部員と雪を見て、赤也はそう心の中で悪態をついた。
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