「んー濃いめが好きな子多いなー糖尿病になっちゃうぞー。」
柳がくれた紙と、ボトルの名前を確認しながら雪はぶつぶつ言いながらも手早くドリンクを仕上げていく。
「あり?平はジャグ?うわ差別ー。」
楽で良いけどー。
ジャグに粉を入れて濃いめに作り、氷をボトルよりも多めに入れる。それを4つ程作り、時計を見るとちょうど休憩時間になるところだった。
「ないすたいみーんぐ!」
麗奈もちょうどタオルを運ぼうと部室に帰ってきたので二人でコートに向かった。
「ドリンクですよー。」
まず重いジャグを平部員が練習しているコートに運んだ。
よほど喉が渇いていたのか一目散に駆け寄って来るものもいる。
「ね、味大丈夫?」
急に雪にそう声をかけられた少年は吃驚したものの、素直に答えた。
「めっちゃうまいっす!」
凄く冷えていて体が喜んでいるし、濃さも丁度いい。実際自分が作るより何倍もおいしい。
「そ?良かったー。皆も何かあったら何でも言ってね!」
にこり、と笑った彼女に見惚れたのは果たして何人いたのか。
麗奈は第六感が働いたのか、タオルはここに置いておきますので、と言って雪を連れてコートを移った。
なんか、今度のマネいいな。
おお、ずっとやってくんねーかな。
癒しだ…。
ついに我が部にも癒しが…!
コートではそんな声が上がっていたとかいないとか。
「ドリンクですよー。」
雪は同じように幸村たちにも声をかけた。
「タオルもありますわ。そこに置いておくのでお使いください。」
「味、変だったら言ってねー。」
雪のその言葉に、皆自分のボトルのドリンクの味を見る。
「俺は大丈夫だよ、好きな味だ。」
「うむ、俺もだ。」
「お前ドリンク作るのうめぇな!」
「よう冷えとるしのう。」
「私も大丈夫ですよ。」
「俺も。」
「俺もだ。」
次々と声があがるなか、髪がくるくるした少年だけ何も言わない。
「不味かったかな?」
「……め…ねぇ。」
「え?」
「俺はマネージャーなんて認めねぇからな!
どうせお前らも顔目当てなんだろ?!」
「赤也!」
幸村が諌めるようにそう言うと、幸村の方を驚いたように見てから唇を噛みしめ、少年はコートから出ていってしまった。