「それにしても、慣れているのか?」
3人で部室に向かっていると唐突に柳がそう口を開いた。
「何がー?」
「桂木はともかく、普通あれだけ人が居れば緊張するだろう。」
「あぁ、バスケ部が人数多かったから慣れちゃったんだと思うよー」
雪の答えに今度は麗奈が口を開いた。
「そういえばバスケ部のマネージャーをなさっていたんでしたわね。
何人ぐらいいらしたんですか?」
「うーんと、正確には忘れちゃったけど100人は余裕かな?」
考えていたよりも多い人数に柳と麗奈は目を見開く。それもそうだ。テニスは8人レギュラーになれるが、バスケは5人。100を越えるとなるとレギュラーの倍率は優に20倍を超す。
「凄い人数ですわね。レギュラー争いもそれは熾烈なのでは?」
「実は全然そうじゃないんだなぁ。レギュラーは今の2年でずっと固定だったからねー。あ、でもこの前一人だけ入れ替わったな…。」
「、確か「キセキの世代」か?」
「うり?よく知ってるね。そだよ!
全戦負けなし、トリプルスコアなんて当たり前!ありえないぐらいすごいよね!」
「全戦負けなし?1年の時からか?」
「もち!キャプテンが何事においても、負けを知らない人だからねー。」
「負けを知らないって…」
「うん、何でも一回も負けたことないの。」
雪はさも当たり前のようにけらけら笑っているが、そんな人間がいるのかと二人は驚く。
「あ、着いた。さ、やろ!」
雪は何事もなかったかのように部室に入っていった。
「じゃあドリンク作って洗濯して玉拾いして、あとは?」
「大まかにはそれだけだ。」
「なら、私洗濯して参りますので雪様はドリンクをお願いしますわ。」
麗奈はそういうと、洗濯機の位置を知っているのかタオルを持って部室を出ていった。
「これは味の好みをまとめた物だ。参考使ってくれ。」
柳はそう言うと紙を数枚取りだし雪に渡した。
「了解。じゃああとは出来るから戻ってくれていいよー。あ、休憩はいつ?」
「今から20分後だ。」
「はいよー。じゃあ練習頑張ってきて。教えてくれてありがとね!」
「いや、構わないさ。」
雪に柳はそう返し、部室を出たところで先ほど話した内容をノートに記入した。
「やはり、興味深いな。」
そして記入し終わりそう呟くと、自分のラケットを持ちコートに向かった。