「幸村くん、大丈夫ー?」
笑い飽きたのか、雪が幸村に聞く。
「まだ、舌がひりひりする気がする。」
「ですよねー。私最初口聞けなかったもん。」
そんなことならもっと注意なりなんなりして欲しかった。
「あり、校門に誰か立ってる。」
彼女の不思議そうな声に校門を見た幸村は気づいた。
「あぁ、風紀委員の検査だよ。登校態度とか服装とか検査するんだ。」
彼女の学校には無かったのか、へぇー、と興味深そうに見ている。
そしてそのまま校門を通り過ぎようとしたとき、
「そこの女子っ!止まれ!」
「うぇえ?!」
声をかけられた、否叫ばれた。
幸村が迷惑そうな顔をしている。
「真田、朝から煩いよ。」
「む、幸村ではないか。すまん。」
どうやら幸村の知り合いらしい。
「ときに、お前!指定の靴下はどうした?」
幸村に謝ってから振り向いた男の子がそう言った。
「靴下?指定なの?」
「今さら何を言っている!まさか今まで違反していたのか?!」
質問されているのに凄く怒られている気分だ。
「ごめんなさーい」
「何だそのふざけた謝り方は!昼休みに指導室にっ「真田、雪は交換生だから靴下とかは免除じゃないかな。確か、制服しか支給されない筈だし。」む、幸村。交換生とは何だ?」
謝り方にまでけちをつけられていると幸村が真田と呼ばれた男の子の話を遮る。
「帝光から半年間生徒がくるって今年の初めに先生が説明してただろう。」
「む、…そういえば、今朝先生が交換生はいくつか規則免除だと言っていたな。」
幸村がそう説明をすると男の子は思い出したようだ。
「はは、勘違いで朝から女の子怒鳴るんじゃねぇよ、おっさん。」
何か耳を疑いたくなる台詞が幸村の口から吐き出された気がしたが雪は聞かなかったふりをした。
「す、すまない。そこの女子生徒も悪かった。」
真田はすこしびくりとしたあと、雪にも謝罪をしてくれた。
「いえいえ、確認してなかった私も悪かったし、」
「だが俺は今朝言われたばかりのことを忘れていたのだ。本当にすまない。」
どうやら真田は真面目な生徒らしく、真摯に頭を下げてくる。でも自分にも落ち度があるので頭を下げさせるのには罪悪感がある。
「あーじゃあお互い様ってことでさ!もう謝んないでいいよ!」
「そ、そうか。すま、…ありがとう。」
「いえいえ。」
男の子はまた謝りかけて慌てお礼に変えた。
「雪の優しさに感謝しなよ、おっさん」
2度目はさすがに流せなかった雪は、怯えている真田とどこか怖い笑顔の幸村を見て乾いた笑顔を浮かべた。