「あれ、雪だ、おはよう!」
「幸村くん、おはよー
初めてだね、朝会うのー…」
幸村に声をかけられ雪は挨拶を返し、話をふったものの何だかふらふらしている。
「もしかして、雪って朝弱いの?」
「ん〜…そんなことない、と良かったなぁ…」
「それ、願望だからね?」
一応言葉は返ってくるものの、何だふわふわとした口調でいつもより幼く見える。
「(可愛いなぁ、)ていうかよく今まで転けなかったね。」
雪のあまりのふらふらとした足取りに幸村は苦笑いをこぼした。本当に今まで転けなかったのが奇跡である。
「だよねぇ〜…みすてりぃ〜」
もう会話すらも成り立たなくなりそうな勢いだ。
「そんなので帝光の時は大丈夫だったの?」
何だか今までの彼女の登校が不安になった。
「ん、幼馴染みのぉ、背中にー、しがみついてた。」
「は?」
「そしたらねー気づいたら学校だったのぉー…」
「しがみついてたって、おんぶ?!」
幸村は彼女の発言に驚く。
「んーん、ちゃりー。」
寝ぼけてるとはいえもう少し分かりやすく説明して欲しかった。
幸村は好きな子の新たな一面が知れて嬉しかったが同時に性別すらも分からない彼女の幼馴染みに少し、嫉妬した。
「でも2ケツなんかしてよく先生に怒られなかったね。」
「せーちゃんも私も成績良かったからぁ、先生甘かったんだぁ。」
「(せーちゃん、男?いや、女?)あ、ほら雪もうすぐ着くからちゃんと起きな。」
性別は気になったものの、男なんて言われたら今は立ち直れない気がしたのであえて聞かなかった。
「んー…。」
幸村の言葉に雪はポケットをあさりだした。
「あったぁー…。
(ぱくり、がりっ)っからあー!」
ポケットからタブレットを取りだし口に含んだ瞬間彼女の目が見開いた。
「それ、何?」
「これはね、くーちゃんが「雪さん朝に使ってください」ってくれた激辛ミント味だよ、ひーからーっ
幸村くんも食べてみる?一発だよ?」
また知らない名前が出てきたが、気にしていたらきりがないので流す。
そして、あのふらふらしていた彼女を一発でここまで覚醒させた激辛ミントが気になって、つい一粒もらってしまった。
「(ぱくり、がりっ)っ〜〜?!」
あまりの味にびっくりしすぎて声が出ない。
「あは、激辛でしょ?」
きっと彼女はこうなることが分かっていたのだろう。悪戯成功とばかりに大笑いしていた。