side 柳生


廊下を歩いているとこの間からよく丸井くんや仁王くん、幸村くんの話によくでてくる女性、吉田雪さんを見かけた。

ちょうど1人のようだ。彼女を見極める、いい機会だと思った。

テニス部レギュラーには顔を目当てに様々な女性が近づく。それは次期レギュラーであっても同じことだ。そのせいで過去に色々と問題もあったのだ。

この間、挨拶をした感じではそのような女性とは違うように見えたが、そのような女性で失敗したこともある。

だから、大切な仲間が傷つくなんて事がないように、慎重に見極めなければ―…。


取り敢えず、彼女が少しでも口を割りやすいように彼女が仲のいい仁王くんに変装して近づいた。でも、

「あは!人を騙すならさ、自分の感情まで騙さないといけないよ、柳生くん」

彼女はいとも簡単に私の変装を見抜いた。
その上、それだけでなかった。

「懐疑、嫌悪、義務感、それから、少しの嫉妬かな?」

私の彼女に対する思惑までも見抜いてみせた。そして仲間に対する思いまでも正確に。
思ってもみなかった展開に私は半ば自棄になった。

「、だとしたら、どうするんですか?私を説得でもしますか?逆に私を嫌いになりますか?それとも仁王くんや幸村くんに―「しないよ、そんな馬鹿みたいなこと。」……、」

彼女はけろりとした顔で言いはなった。

万人に好かれようなんて思ってない。と。
逆に嫌われているのを隠されるほうが嫌だと。
嘘偽りも含まない純粋な声色で言った。

そして彼女は更に言葉を重ねた。

「まぁ私個人としては柳生くんみたいな仲間想いな人は好きだしね。」

自分を嫌っている男にそう言い、無邪気に笑いかけてみせたのだ。

私は彼女の去っていく後ろ姿をただ立ち尽くしながら見ていた。


(あぁ、どうやら私は彼女の本性を暴こうとしてその魅力に逆に魅了されてしまったようだ。)
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