休み時間にあの転校生特有の質問攻めは何故か起こらず、私はほっと一息ついた。

「そういえば、何でさっきあんな質問したの?」

「あぁ、この学校のテニス部ってね強いし忌々しいことに顔までいいのよね。…っち」

「(舌打ちした…!)へー。」

「で、それにたかる女子、いや化粧お化けが煩いのなんのって…」

両手をあげて やれやれ、みたいな仕草をするあずちゃん。可愛い顔に似合わず毒舌だ。

「酷い言い様じゃのう。」

「化粧お化けは酷いだろぃ!ぎゃははは!」

急にカラフルな頭をした二人の男の子が話に入ってきた。

「うげぇ…寄ってくんなし。
はぁ、雪、これがそうよ。」

あずちゃんが顔全面に嫌悪感を露にしている。

「(うーん、きーちゃんのがイケメンだと思うけどなぁ…)よろしくねー」

とりあえず紹介?されたのでにへら、と笑って挨拶しておいた。

「おん、よろしくの」

「シクヨロだぜぃ☆」

なんだかフレンドリーである。

「ほら、もうお前ら散れ!」

あずちゃんがしっしっと追い払おうとしている。ぼんやり眺めていると、白い頭をしている方が何故か目についた。

「(…あ、そか)ね、白君、手首大丈夫?」

「!」

「は?つか白君て誰だよぃ」

「あー、ごめん。君だよ君。左、ちゃんと処置しなきゃダメじゃん。」

「雪、左って…?」

あずちゃんが不思議そうに私に尋ねてきた。

「ん、ひねってるんだよよ多分。テーピング残ってたかな?………お、あった。さ、手首見せて。」

鞄から残っていたテーピング用のものをとりだし、戸惑いがちに出された左手首を負担がかからないよう固定した。

「ん、出来た。まぁ、一応2、3日は無理しちゃダメだよー。」

何故か皆無言だ。

「どったのー?」

「や、なんかびっくりしたんだよぃ。何でわかったんだ?」

「だって明らか手首の動きとかおかしかったからさ。」

不思議そうな赤いのに答えると、視界の端であずちゃんがぶるぶるしてるのが映った。

「あずちゃん?」

「っもう!可愛いうえに、ナイチンゲールとか…!」

なんか鼻息が荒い。

「あぁ、きょとんとした顔も可愛い!嫁にこない゛?!ちょ何すんのよ仁王!」

驚いて固まっていると、あずちゃんの後頭部に白君の手刀が入った。

「鼻息荒くてキモいぜよ。雪もびっくりしちょる。」

「お前のがキモいわ!私の雪を呼び捨てにすんなし!」

「仁王雅治じゃ。テーピング、ありがとのぅ。」

華麗にあずちゃんを無視した仁王?君は私の頭をぽんぽんと叩くと、自分の席に帰っていった。

呆然とするあずちゃんと赤いの。2人の驚き様にわけが分からない。

「どうしたの、あずちゃんに赤君、固まってるよ?」

「俺は、丸井ブン太だ!ってちげぇよ!いや、そうだけど!」

なんだか赤い子は愉快なようだ。

「丸井、うっさい。
仁王ってね、女の子名前で呼ぶことなんてないのよ。だから、ちょっとびっくりしちゃって。」

そうあずちゃんが説明してくれたところで、チャイムが鳴った。

「まぁ、気にしなくてもいいよ!気まぐれな奴だしね!さ、次は数学だよ!」

「ふーん、わかった。」

そして私達も席に座り直した。




ところで、そこで沈んでる丸井君は放置でいいのだろうか。
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