赤司の家に報告に行った翌日、雪は整体やスポーツ医学についての本を探しに、近所の図書館に来ていた。
「うーん、と…あ!あった、けど高いぃー…」
蔵書数の多さを誇るこの図書館は当然ながら本棚の背も高い。
近くに手頃な踏み台がないかと見るが何故か見つからない。
「ん〜っ…あと、ちょっ、と…っ」
もう少しで届くのに、そのもう少しが遠い。すると、後ろから伸びて来た手が雪の取ろうとしていた本を抜き取った。
「これか?」
「はい!ありがとうございますってみーちゃん!」
「誰かに頼んで取って貰えばいいものを…。」
先ほど粘っていたのを見ていたのかみーちゃんこと緑間真太郎は呆れたように溜め息を吐いた。
「だって、なんか悪いじゃん。」
「相変わらず変に気を使いすぎなのだよ。」
緑間は呆れたような声色でそう言い、眼鏡を押し上げた。
「そ?ま、みーちゃんが取ってくれたしもういいじゃん!ところでみーちゃんはどうしてここに?」
「何を言っても無駄なようだな。
今日のラッキーアイテムが図書館だったからだ。」
もうアイテムですらないのはつっこまないほうがいいのだろうか。
「へー、偶然だね!じゃあこれからどうするの?」
「あぁ、もう目的は達したからな。帰って何かするつもりなのだよ。」
「じゃあさ、私と話そう!久しぶりに会ったんだしさ。ね、いい?」
「どうせ嫌と言ったところで聞かないのだろう。待っていてやるから早くそれを借りてこい。」
「えへへ、やった!」
緑間のその言葉に雪はすぐに本を借りに言った。
「それにしてもみーちゃん、背また伸びた?」
雪が緑間を見上げながら言った。
「測ってないから知らないが、この間赤司に睨まれたから伸びているのだろう。」
緑間の赤司に睨まれたという言葉に雪は笑った。
「あは、征ちゃんの唯一のコンプレックスだもんね、身長は!」
そう、頭も顔も運動神経までもいい赤司征十郎には唯一のコンプレックスがある。それが身長なのだ。
「身長は俺のせいではないのに、俺を睨んでくるのは勘弁してほしいのだよ、全く。今はお前がいないから更に酷いのだよ。」
そう、身長のことで不機嫌になった赤司を慰めるのは幼馴染みでもある雪の役目だったのだ。
つい、2週間前までは日常だった事がなんだか懐かしく感じて雪は苦笑いを浮かべた。