「今日移動教室ばっかりだったね〜やっと昼休みだぁ」
雪がん〜っと伸びをする。
「確かに何だか休み時間ものんびり出来なかったものね。」
そうなのだ。今日は1時間目の体育に始まり、ずっと教室移動でこの教室には荷物をお気に来るだけで、休み時間もいまいち休めなかった。
2人は机をくっつけてお弁当を広げた。
「まぁ午後は移動ないからちょっと嬉しいね。」
「まぁこんだけ移動教室だったらねぇ」
立海は私立だからか教室数も多く校舎も広いため移動も面倒だ。
「あー、何か午後寝そうだなぁ」
階段の登り降りで疲れちゃった、と雪が笑う。
「おばさんみたいよ?」
梓がからかうように笑った。雪も、あずちゃんひどーい、なんて笑っている。
「あ!メール返すの忘れてた!」
お弁当を食べ終わり、片付けたところで雪が思い出したように携帯を取り出した。
「そのストラップ、可愛いわねー。」
「ありがと!昨日帝光の友達とお揃いで買ったんだよ〜」
誉められたのが嬉しかったのかにこにことメールを返しながら笑った。
「いいわね〜
あ!ねぇ、今度私ともお揃いで何か買わない?」
「買う買う!もちろん!っと、電話だ。ちょっとごめんね?…もしもし?」
雪はそう言って電話に出た。
「なんじゃ新川、雪に放置されとんの。」
「うっさい仁王!放置なんてされてないし!」
雪が電話をしているので手持ちぶさただった梓に仁王が話しかけてきた。相変わらずテニス部は嫌いだが、雪といる人間らしい仁王はきらいじゃない。だから無視せず、ちゃんと言葉を返した。
「あ、そういえば俺ら昨日あいつと会ったんだけどよぃ、」
「え、何私の許可なく雪と会ってんの丸井?」
丸井の言葉に梓は笑顔で返すが目が笑っていない。
「こえぇよ!ってそうじゃなくて!男と女が一人ずつあいつといたんだけどよ、男の方俺どっかで見たことある気がすんだよなー。」
「はあ?なにそれ。」
丸井の言葉に梓が呆れたように返す。
「見たってどこでじゃ?」
「や、それが思い出せたら苦労しねぇよ!なぁんか昨日から気になってんだよなー」
「ていうか、丸井。どんな男だったの?その雪といたっていう不届きものは。」
ふふふ、と笑った梓の目は据わっていた。