「なあ、帰りファミレス寄らね?何かパフェ食いてぇんだけど。」
部活が終わり、部室で着替えながら丸井がそう声を上げた。
「あ、俺無理っす!予約してたゲーム取りに行くんで!」
「はあ?!赤也先輩の誘いけるなんて生意気だな!」
「ちょっ痛い痛い痛い!」
すかさず断った赤也に丸井がヘッドロックをかける。なんとも痛そうである。
「ちょ、ぎぶッぎぶッス」
赤也が床をバンバン叩く。
「ブンちゃん、俺が行っちゃるから離してやりんしゃい。」
「は?珍しいじゃん、仁王が来るとか。」
「今日はそんな気分なり。」
「ま、いいや!よし、着替え終わったし行こうぜい!」
ところ変わって駅前。3人の男女が歩いていた。
「本当に久しぶりっす雪っち〜」
そう言って雪を金髪の男が抱き締める。とても顔が整っているため、女の子の視線を集めている。
「そだね〜。1週間ぶり?」
「3週間ぶりっす!本当に思ってるんスか?!っていってー!」
「ちょっと私の雪ちーに抱きつかないでよ!」
「ちょ、ぐーは酷いっす!」
金髪の男を殴り、雪を抱きしめたのは、長い髪の可愛らし女の子だ。
「あーん、会いたかったよぉ〜!」
「ふわ、さっちゃんくすぐったい!
んふふ、私も会いたかったよ!これは本当だからね、きーちゃん!」
雪が笑顔でそう言うと、2人の男女――黄瀬涼太と桃井さつきは嬉しそうに笑った。
「それにしても何できーちゃんとさっちゃん?珍しい組み合わせだよねー」
「あぁ、きーちゃんがこっそり会いに行こうとしてたから私もついて来たの!」
「ちょ、こっそりって人聞き悪いっすよ!ただ俺は会いに行こうとしてただけっす!」
「なぁーによ、部活休みなのにスッゴいにこやかに急いで教室出ていこうとしてたくせに!」
痛いところを疲れたのか黄瀬がうっと言葉に詰まった。
「きーちゃんは相変わらず、弱いねぇ!」
雪が止めをさした。
「ふ、二人して酷いっす〜!だって3週間も会ってないんすよ?皆に会いに行くなんてバレたら絶対ついてくるじゃないっすか!」
「まぁ確かにねぇ。誰も会ってないわけだし。」
「?征ちゃんとみーちゃんには会ったよ?」
「「え?」」
雪の発言に2人が固まる。
「それに征ちゃんだったらこの間も家に行ったよ〜。あ、ほらこれ貰ったの!」
雪が手首をあげると、赤い華奢なブレスレットが揺れた。
「え、家に雪ちーが来るとかずるい!赤司君何も言ってなかったのに!」
「確かに幼馴染みズルいっす!しかも何で緑間っちも会ってるんすか!」
2人がすかさず反応し、大ブーイングする。
「2人も今日会えたからいいじゃん!私すっごい嬉しいよ!」
しかしそんな2人も彼女のその一言であっという間に機嫌が治った。
「(っていうか、あれって…)」
「(完全に"虫避け"っすよね。自分の色だし。)」
「(相変わらず赤司君って雪ちーに甘いよね。)」
「(や、あれは甘いっていうより…)」
「何こそこそ話してるの?」
「ううん!ね、私も雪ちーに何かあげたいから、買いっこしよ!」
「うん!しよしよ!」
黄瀬とさつきが雪の発言について話していると、雪が振り返ったため黄瀬は一度口を閉じた。
「えー!じゃあ俺とはお揃いで何か買うッス!」
「うん!勿論!」
それから3人で話ながら雑貨屋へ向かった。
「(あれは甘いっていうより―――雪っちを好きだからだと思うんスよねー)」