あのあと、なんとか鼻血を止めた麗奈は

「お怪我以外でもお困りのことがあれば何でも仰ってくださいね!」

とにこやかに言って去っていった。

「台風…?」

教室中ぽかーんである。
あれ、さっきの幻覚?
現実逃避するもの迄現れた。

「まぁ、可愛かったしいっか。」

けろりと言い放った雪に何人かが芸人よろしくずっこけた。

「いやいやいや!よくねぇだろい!」

ようやく丸井が突っ込んだ。最近突っ込みがいたについてきているのはきのせいだろうか。「お前らのせいだろ!」そんな叫びは聞こえない、断じて。

「丸井煩い。まぁファンクラブ会長に気に入られたみたいだし、良かった、のかしら。」

丸井が梓にげしっと蹴られた。

(いや、あれは恋されてた!
ていうか、丸井……)

何人かが心の中で突っ込んだ。そして丸井に哀れみの視線も向けられた。
でもよくあることなので雪はまるっとスルーして梓に問いかけた。「最後の砦が…!」哀れな丸井である。


「ファンクラブって何の?」

交換生の彼女にはなにがなんだか分からない。

「あぁ、そりゃ知らないわよね。テニス部よテニス部。結構怖いらしいのよ。」

「部活にファンクラブなんてついてるの?!すごーいっ」

無邪気に喜んでいる彼女に何だか教室にほのぼのした空気が流れる。「まぁ雪ちゃん笑ってるし、いっか!」「可愛いしね!」「うん!」何だか根本的に違う。

「でも桂木ってテニス部にさえあんなになんねーよ…。」

「雪が凄いってことなんか…?!」

普段からよく桂木麗奈を知っているテニス部の2人は未だに絶賛混乱している。が、

「吉田だししゃあねーのか…?」

「まぁ、の」

こちらも何だか違う。
しかし原因の彼女はもう気にしていないのか、可愛い子と仲良くなれたな〜なんて上機嫌だ。

梓も納得はいっていないようだが、桂木に敵意を微塵も感じなかったからか良かったわね、なんて笑っていた。

というかむしろ敵意どころか純度120%な好意だった。
順応性が高いのです
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