ピンポーン
「おじゃまします。」
私は形だけのチャイムを押して、家に入って行く。
そして2階に上がり見慣れた部屋のドアをノックした。
「いいよ、入って。」
「久しぶり、征ちゃん!」
そう、私は約束通り征ちゃん、幼馴染みの家にやってきたのです。
「珍しいね、土曜日に部活がないなんて!」
「あぁ、なんか体育館の耐震検査をするらしいよ。」
「ふぅん。あ、見て!ちゃんと勝ったんだよ!」
私は征ちゃんに携帯で写メったスコアを見せる。今日来た理由はこれだからね!
「結構点数取られてるじゃないか。」
「えぇ?私頑張ったんだよ?ちゃんと勝ったし!」
「相手、強かったの?」
「ん、4人バスケ部のレギュラーだったんだってー。次の日勧誘されちゃった!半年だけでもいいからーて。」
「へぇ。じゃあ…」
「っわっ!」
「これ、何?頑張りすぎた、なんて言わないよね?」
征ちゃんが私の左腕を掴み、服の袖をまくりあげ巻かれた包帯を見ながらそう言う。
「あはは、や、その…転けた?」
「はぁ、」
征ちゃんはため息を吐き、私腕の包帯をほどいた。
「ちょ、征ちゃん?何してっ…ぃあっ」
私の静止も聞かずに、包帯をほどき私の腕の傷口を、舐めた。
「はぁ、雪もいい加減俺に嘘つけないって気付きなよ。」
「え?…ぃっ!」
そう話ながらもいまだに傷口を舐め続ける征ちゃん。どきどき舌で強く傷口を押してくるために、痛くてつい声が出る。
「嘘ついてるときお前絶対唇に触れるんだよ。気づいてないだろうけど。」
「え、嘘?!」
「俺がお前嘘ついたことあった?
だからこれはお仕置き、だ。」
「やだ、い、たい…っ!ごめ、謝る、からぁ…ぁいっ!」
さっきよりも深い傷口を舌で強く押され、つい泣きそうになる。
それでも征ちゃんは許してくれず、なかなか離してくれなかった。
「今度嘘吐いたら、分かってるな?」
やっと解放された私は全力で首を縦に振る。
そんな私を呆れた目で見ながら、包帯を巻いてくれるあたり、心配してくれてるんだろうなぁ、なんて思う私はおかしいのかな。
ぼーっとしていると、手首に何かが触れた。
「?」
「ご褒美、だよ。ペナルティだけなんてお前がうるさいだろうから。」
手首には細く赤い革の紐に小さな星と月が散りばめられた可愛いブレスレットが着いていた。
「わ、可愛いー!頑張った甲斐があった!」
私は手首を見ながら征ちゃんは相変わらず飴と鞭が上手いなぁ、なんて考えていた。