side 麗奈
先程、私(わたくし)はヒーローに出逢いましたわ。
私は、産まれた家が家なだけに自分で言うのも何ですけれど、手に入らないものなんてありませんでしたわ。
幼少の頃、お人形が欲しいと言えば沢山のお人形達がすぐにやって来ましたし、服が欲しいと言えば使用人がすぐに車を回し店を貸し切り、私を連れて行ってくださいました。
ただ、大きくなるにつれて1つだけ手に入らない"もの"を見つけましたの。
それは、"無償の愛"というなんともわかりずらく、けれど私の心がとても渇望しているものでした。
けれど、両親はお金だけ私に与え仕事にばかり打ち込んでいましたし、使用人たちは私の機嫌を良くすることだけを考えておりました。
ですから、"無償の愛"が私には分からなかった。どうして自分が欲しているのかも分かりませんでしたが私はとにかくそれを知りたかった、感じたかったのです。
ですから中学に入り、ファンクラブなるものを作りましたの。
テニス部の方々に恋をしている彼女たちを見れば、私にも"無償の愛"が分かるかもしれない、そう考えたのです。
けれど、いざ彼女達に接してみるとそれは、ただただ自分の欲にまみれたものでした。
自分が作ったのだから投げ出すわけにもいかず、ファンクラブ会長を続けておりましたが、私は絶望しておりました。
そんな時なのです。彼女が私を助けて下さったのは。
彼女は自分が怪我をするのを顧みず、私を助けて下さいました。
下手をすればあわや自分が大怪我をするのにも関わらず、自分の身を挺して見ず知らずの私を助けて下さったのです。
そして、私はそこで彼女への感謝とともに、"無償の愛"というものを初めて感じたのです。
あとから、彼女が交換生で吉田雪とおっしゃることを知りました。
ああ!もうファンクラブなんてどうでもいいわ!私は彼女、雪様のために動きましょう!私に"無償の愛"と言うものを教えて下さったあのお方を私は御守りしたいのです!
彼女が下さった飴をそっと箱にし舞い込み、月曜日の朝一番に彼女に会いにいこうと決めた。
(ああ、早く月曜日が来ないかしら!)