そして中間テストの結果が発表された今日、たまたま梓が部活が無いというので一緒に帰ることになった。
「この学校ってグラウンド広いねぇ!」
「一応私立だしね、それなりにどこも強いのよ?」
「へえ!あ、野球部試合やってる!」
グラウンドでサッカー部と野球部、ソフト部が練習をしていた。
皆なんだか生き生きしていて、少し帝光が懐かしくなる。
「この暑いのに元気よねー。」
「あは、確かに!汗だくだろうね!」
そんな話をしていると、グラウンドの隣のテニスコートに行くであろう女の子達とすれ違った。
「皆若いねぇ」
「やだ、雪ってばおばさんみたいよ。」
梓が雪の発言にクスクスと笑う。
「避けてくれーっ!」
そんな声が不意にして、見上げてみると、折れたであろう木製のバットがこちらに飛んできていた。
先程すれ違った女の子たちめがけて飛んでいるが、テニス部を応援する女の子たちの声援がすごくて聞こえていないようだ。
「危ないっ!」
「え、?」
雪は咄嗟に女の子の腕を取り、自分で庇うようにして内側に女の子を引き込んだ。
バキッと木製のバットが先程女の子がいた位置に落ち、割れた。
更に破片が飛ぶ。
「っ!…と、大丈夫?」
雪は破片がかからないように女の子の盾のようになり、無事を確かめた。
「っ!だ、大丈夫ですわ!」
女の子は現状が把握できたのか、顔を真っ青にしながら答えた。
あれが当たっていれば確実に怪我どころではすまなかっただろう。
「良かったー。
可愛い女の子に傷なんてつけらんないもんね!」
自分を助けてくれた少女はにこり、と笑った。
「ありがとうございましたわっ!貴女が助けて下さらなかったら、わたくし、今頃…!」
そう言って頭を下げた所で少女の左側にポツポツと赤い液体が落ちているのに気がついた。
「あ、貴女怪我をして…?!」
「んー?あぁ、これぐらい平気平気!君を守れたんだから安いもんだよっ!」
なんとも男前に少女がまた笑う。が、
「っこのばかっっ!」
「い゛っ!?」
「何が平気よ?!こんなに血出して!保健室いくわよ?!」
「あずちゃんに殴られたほうが痛い…。あ、ちょっと待って!」
「はぁ?!」
「ね、大丈夫?ほんとに怪我ない?」
「え、えぇ!もちろんですわ!貴女が助けてくださったんですもの!それより…貴女は……」
「あぁ、大丈夫だから!だからそんな顔しないで?ね?」
「雪っ!」
「ちょ、行くから!
はい、これあげる!気をつけて帰ってね!」
少女はそう言うと助けた女の子の掌にちょこん、とイチゴ柄の包みの飴を置いて、怒っているであろう友人の元へ行ってしまった。
「………。」
残された女の子は、少女の笑顔と優しさに、なんだか泣きたくなりながらも、もらった飴をきゅっと握り締めた。