試合が始まって10分も立たないうちに4本も相手のシュートが決まった。
メンバーの子たちが不安げに雪を見る。見られた本人はにっこりと笑い、
「よし!行くよー!」
そう叫んだ。
次の瞬間、雪にパスが通る。
そして素早い動きで瞬く間に雪がシュートを決めた。
「一本、大事に行くよー!」
そして相手のボールになったが、梓が上手くカットをし再び雪にボールが回り、またシュートが入る。
その後もボールは雪に集められていく。
相手チームも先ほどまでとは様子が違うことに気づいたのか、雪に気をはりはじめた。
が、彼女がパスを貰うだけではなく自分でもパスカットをし、挙げ句貰いやすい位置にまで動くので、点がどんどん追加される。
「旭!美佳!吉田さんに着いて!このままじゃ負けるよ!」
遂に相手も本気モードのようだ。パスが雪に通りにくくなる。
いくら彼女が上手に動いてもやっぱり初心者ばかりのチームとバスケ部のチームでは差が出る。
14―8まで離したスコアが少しずつつめられる。
「んー、ちょっとヤバい、かな〜?」
負けるわけにはいかない雪はどうしよっかな、と呑気に悩み始めた。
その間にも相手のシュートが決まり、遂に点差が2点になった。
そこで、やっと行動を起こした。
「あずちゃん、原ちゃん、高瀬ちゃん、蓮井ちゃん!私、ちょっとガチるから!」
名前を呼ばれた4人は突然のことに、よく分からなかったが取り敢えず頷いた。
それを見た雪は満足気に笑い、パスをカットし近くの梓に渡す。
そして、もう一度自分に戻してもらいながら、シュートを決めた。
「なっ!」
「アウリープ?!」
相手の驚く声が聞こえる。
「もう1本ー!集中するよー!」
雪はその次も素早い動きでパスの出所を遮る。
焦った相手がついボールをこぼし、それをすかさず先ほど原ちゃんと呼ばれた女の子が取り、雪に渡す。
が、流石バスケ部。急な事態だったにも関わらず、マークが2人着く。
「うわお、流石!―――でも、ごめんね!」
流石に2人はかわせないだろうと、誰もが思ったその瞬間彼女は――跳んだ。
そしてシュートを打った。まさかスリーポイントのラインよりセンターラインに近いこんな所から打つなんて誰も思わず、マークについていた二人も固まる。
「ぼーっとしないで!そんなところから打って入るわけ………!」
相手チームの一人がそう叫んでいる間に、彼女の打ったシュートはまるで魔法のようにゴールリングに吸い込まれ、入った。
「みーちゃん直伝みらくるしゅーとぉー」
体育館の誰もが固まる中、そんな呑気な雪の声が響いた。