「第1試合、26対10でA組の勝ち!両チーム、礼!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
試合が終わると応援していた子達が寄ってきて、口々に褒めてくれた。
「雪、格好良かったぜよ。」
「お前、すっげえな!」
「あ、仁王君に丸井君も!ありがとね!」
今日何度目なのかわからないお礼を言う。
「私の雪なんだから当たり前よ!」
「ふふ、新川は性格だけじゃなく、頭まで悪くなったのかな?
雪、俺びっくりしたよ、凄く綺麗なプレイだったね!」
「え、あ、うん、ありがと!」
さらりと梓を貶してから褒められた雪は戸惑いながらもお礼を返した。
「はっ!あんた以上に性格悪い奴なんているわけないじゃない!あんたこそ頭わいてんじゃないの?」
「(あずちゃん、今鼻で笑った…!)」
「は?俺以上に性格いいやつなんていないから。動きすぎて可笑しくなった?あ、元から可笑しいのか!」
にこり、と爽やかに微笑みながら毒を吐き合う2人に周りから徐々に人が減っていく。
「え、何あれ怖い。」
「あの2人は特別仲が悪いんだ。例えるなら水と油だな。」
2人の言い争い?に雪が驚いているとのっぽな人が口を開きそう言った。
「んーよく分かる例えだね!ところで誰?」
「俺は柳蓮二だ。幸村や仁王と同じテニス部に所属している。」
「へー、私は「吉田雪、だろう?」え、」
「帝光からの交換生で、帝光では成績は常に上位をキープ。部活はバスケ部マネージャーで親と3人暮らし。身長158cm、体重は…ここでは臥せておこう。」
「え、ナニコノヒト。まさかのすとーかー?!」
初対面の人物にいきなり自分の個人情報をすらすら話され、怯える雪 。
「ぎゃはははは!柳、ストーカーだってよ!」
「雪、こいつは、情報集めるのが趣味なんじゃ。我慢しんしゃい。」
丸井がストーカー発言に爆笑し、仁王がフォローに入った。
「え、どんな趣味なの。や、まぁいいけど。」
「(いいのか。)いきなり悪かったな。ただ仁王と幸村が仲の良い女子が珍しくてな、興味を持ったんだ。」
柳が心の中で突っ込むが当然彼女には聞こえない。
「へー。てか私、珍しいの?」
「あぁ、かなりな。」
「なーぁんか柳君ってみーちゃんみたいだね!」
「は?」
急に話題が変わり困惑を示す柳。
「いやいや、急に話変わりすぎだろい。」
丸井が冷静に突っ込む。
「みーちゃんで誰じゃ?」
「帝光の時の友達だよ!占いが大好きな子なんだけど、なんか雰囲気柳君に似てるんだよね。」
彼女がそう言うと、頭の中に女版柳が浮かび仁王と丸井はちょっと引いた。
一方彼女は元気なのかな〜?と頭の中で緑の髪をした"彼"を思い浮かべていた。
仁王達との誤解が半端ではない。むしろ性別から違う。
しかし、そんなことに当然気づくはずもなく。チームメイトに次試合だと呼ばれた彼女は
「じゃ、仁王君と丸井君もサッカー頑張ってね!あと柳君も何に出るか知らないけど、頑張って!」
そう言って、まだ言い争いを続けていた梓を引っ張ってコートに入った。
「次試合見れないのが残念じゃのう。」
「あーそだな。でもあのチームなら残るだろうからまた見ればいいじゃん。ほら、行くぞ!」
丸井はそう言うと仁王を引っ張りグラウンドへ向かった。
「柳、どうだった?」
「幸村か。」
俺もそろそろ行こうかと考えていると、先ほどまで言い争いをしていた幸村が話しかけてきた。
「まだよく分からないが、悪い奴ではないことは分かった。あと――今までの女子とは違うこともな。」
そう返すと幸村がにっこりと笑った。しかしその顔がすぐに崩れ
「まさか新川と仲が良いなんて考え付きもしなかったよ。」
と、先ほどとは違うどこか棘のある笑みを浮かべた。
「まぁ新川が仲が良いのも他の女子と違う証拠だろう。」
「まぁ、そうなんだけどね。」
俺あいつ嫌いなんだよなー、とぼやいている幸村を見ながら、柳はまた接触しようと次の接触方法を考えていた。