「それでは、第1試合を始めます。両チーム、礼」
「「「「お願いしまーす!」」」」
体育館につくと、程なくして試合が始まった。
「ジャンプボールは私行くね、1番おっきいし!」
同じチームの女の子がそう言ってコートの真ん中へ向かったので、残りのメンバーで、周りを囲んだ。
ひゅっとボールが投げられ、二人が飛ぶ。
バシィッ
「!高瀬ちゃん!パス!」
ボールを取ったのは雪のチームの女の子だ。だが運悪く、周りを囲まれている。だからそう声をあげると僅かな隙間から、パスが出された。
「あずちゃん!」
1回マークが薄かった梓にボールを任せて前に走る。
「新川さんだよ!」
しかしどうやら梓は注意されていたようで、すぐにマークが着く。
「原さん!」
梓は前にいた、先ほどジャンプボールをしたら女の子にパスを出した。
ドリブルでその女の子、原が前進する。
「誰か、着いて!」
相手チームの子が叫ぶ。が、
「原ちゃん!」
雪がそう叫び、パスを要求する。
「雪ちゃん!」
ボールを受けた雪は素早くゴール周辺の子たちを避け、綺麗なフォームでシュートを決めた。
流れるような彼女の動きに、一瞬誰もが見とれた。
「っすげー!」
「何かプロみたい!」
「雪ちゃん!さすがー!」
一人が声をあげると次々と称賛の声が上がった。
「雪ちゃん!ナイスショット!」
「凄い綺麗だったよ!」
「雪さすがっ!」
チームメイトも褒めてくれる。
「ありがとー!皆のおかげだよ!さ、次も頑張ろっ」
雪は笑顔でそう返すと、他のメンバーも笑顔で返し、試合に集中した。
「あれ、丸井に仁王だ。2人ともサッカーじゃないのかい?」
応援しようと体育館に向かっていると、幸村と柳に会った。
「あぁ、女バスの応援に行くんだぜぃ!」
「!丸井はともかく、仁王までとは珍しいな。」
丸井のその言葉に柳は驚いたが、幸村は気づいた。
「雪の応援、かな?」
「!何で幸村が雪のこと知っとんじゃ」
「驚いたな、名前まで呼んでいるのか。」
「この前屋上で会ってね、友達になったんだ。」
幸村がふふ、とどこか含みのある笑顔を見せる。微かに仁王の眉間に皺がよったように見えたが、さすが詐欺師と言うべきか、すぐにポーカーフェイスに戻った。
「幸村君が女子と友達なんて珍しいな!まぁ吉田はいいやつだから分かるけど。」
「3人とも仲がいい女子か。興味深い。丸井、俺も着いていっても?」
「別にいいぜ!その代わりちゃんと応援しろよ!幸村君はどうする?」
「ふふ、俺も行くよ。」
ちらりと仁王を一瞥してから幸村はそう返した。
仁王はどこか不機嫌そうだ。
(いつも飄々としている仁王をこんな風にするなんてな…。幸村も親しいようだし、丸井も気に入っているようだ。吉田雪、興味深いな。)
柳は仁王と幸村の様子を見ながらそう心の中で呟いた。