「…コピーしか出来んなんて、カッコ悪いじゃろ。」
只でさえ決め技もなにもなくて、その上今試合にも負けた。彼女の目には俺はどう映ってる?
「そりゃ決め技とか欲しいけど。でも俺にはこれしか出来んのじゃ。…ほんま、カッコ悪い。」
一度吐き出すと、今まで心のどこかで考えていたことまでずるずると出てくる。もう何もかもみっともない。
けど、どうしてか吐き出してしまうんだ。それは、きっと――…
「そんなことないよ。」
心のどこかで、彼女に肯定して貰いたい、彼女なら俺をこの劣等感から救ってくれるんじゃないかと、願っている自分がいるからだ。
「だって私にーくんの試合見ててわくわくしたもん!」
真っ直ぐな雪の瞳に泣きそうになる自分がいた。
「それにさ、人を真似るのも凄い才能だと思うよ?だって、にーくんはそれだけ人のことを見てるってことでしょう?」
どうして、どうして雪は…
「それだけ周りを見れるって、それだけで凄いことだよ。だって普通自分のことでいっぱいいっぱいで周りなんて見れないじゃん。」
こんなに、俺の欲しい言葉をくれるんだろう。
「その上自分のものに出来るんだから、カッコ悪いなんてある筈ないよ。
だからそんなこと言わないで。」
優しく笑う雪に視界が霞む。泣くところなんて見せたくなくて、彼女の肩口に顔を埋めた。
「ちょっとだけ俺のこと、見んで。」
「、うん。」
とん、とん、と優しく背中を叩く手に更に泣きたくなる。
「決め技なんて無くたって、にーくんのテニスは人を魅せる魅力的なテニスだよ。」
その上、こんなことまで言われたらもう完敗だ。
ほんとは男の癖にこんなところ好きな人に見せたくない、こんなみっともないところを。どうしようもなく自分が情けない、―――でも、それでも、心は長年の重しが消えたようにどこか軽かった。