丸井のその一言に切原は目を輝かせ、ジャッカルは顔を赤くした。
「の、覗きとかだめだろ!」
「つまんねーこと言うなって!仁王もそう思うよな!」
「俺は危険な橋は渡らない主義じゃ。」
「はぁ?お前もかよ!赤也はんなこと言わねーよな?!」
「もちろんっすよ!」
すると、二人は女風呂との境へ向かった。
「いいのか、幸村。」
「ののの覗きなどったるんどるっ」
「そう言いながら顔赤くしてんなよむっつり。」
柳の問いかけに幸村はまずにっこりとそう毒を吐いてから答える。
「いいんだよ。向こうには桂木がいるしね。」
「桂木さんがいるのと覗きがどんな関係が?」
隣で聞いていた柳生が不思議そうな顔をする。
「まぁ見ててごらん。」
幸村のその言葉に皆が丸井と切原を見ると、二人はもうすぐ壁のてっぺんに辿り着くところだった。
そしてそれは二人が壁の上から頭を出した瞬間だった。
高速で飛んできた風呂桶が鼻の下を伸ばしていたであろう無防備な二人の頭にがっこーんといい音をたてて当たった。
「………風呂桶のたてる音ではない気がするのですが。」
「桂木が投げた確率99%。」
「じゃから残りの確率は一体…」
「ふふ、流石俺とやりあえるだけあるよね。」
見ていたもの達は壁が落ちた二人を心配することなく会話を続ける。
「温泉って…………」
すっげー怖い!
その光景を見ていたジャッカルに、温泉の間違ったイメージが植えつけられた。
一方、女湯では
「れーちゃん、どうしたの?」
「いえ、少し猿が…。」
「え、猿がいたの?!見たかった!」
「うふふ、もういなくなってしまいましたわ。」
「えぇ、ざんねーん。」
豪速球で風呂桶を投げた本人はそれを感じさせない上品な笑みで嘘を吐いていた。
「ところで、雪様。」
「ん?なにー?」
「意外と巨乳ですのね。」
「ぶっ!突然どうしたの?!」
真顔でまじまじと胸を眺めてくる麗奈に雪は温泉に体を沈めながら吹き出した。
「サイズは?」
「え、人の話聞いてる?」
「いくつですの?」
「れーちゃんがおかしいんだけど!
……暫く測ってないけど、たぶんDかな。」
突っ込んでもなお真顔で見つめてくる麗奈につい答えてしまう。
「う、羨ましいですわ!私なんてBなのに!」
「ちょ、れーちゃん、キャラが崩れてるから!」
そして何だか麗奈がいつもの自分を忘れて暴走していた。雪が突っ込み役に徹しているのがいい証拠だ。
「うぅ、どうすればそんなに大きくなりますの?」
「え、急に聞かれてもなぁ、んー……牛乳?」
「私これから毎日牛乳飲みますわ!」
別にまだ14歳なんだから、と雪は思ったが本人からすれば深刻な悩みのようで麗奈は声高にそう宣言した。