「雪!悪いんだけど、球だし頼めるかな?桂木はドリンク作ってくれてるみたいだしさ。」
昼が過ぎて、洗濯物を干しているとそう声を掛けられた。
「うん!あ、あとちょっと待ってもらってもいい?これ干しちゃいまいし。」
「うん、いいよ。」
「ありがとう!すぐ干しちゃうね!」
雪はそう言うと、手早く洗濯物を干していった。
「ん、お待たせ。行こっか!」
「うん。」
そう会話を交わしたあと幸村とコートに向かった。歩いていると、幸村が話しかけてきた。
「そう言えばマネージャー業大丈夫かい?」
「ん?平気平気。前の方がハードだったぐらいだしねー。れーちゃんもいるし、楽しいよ!」
「そう、なら良かった。」
半ば無理やりマネージャーを頼んだと聞いていたため、実は嫌だったのではないかと幸村は少し不安だったのだ。でも、雪のその返事に安心する。
「皆がテニスしてるのも見てて楽しいしね。」
「俺たちのプレーがかい?」
しかし、その質問が幸村の足元をすくう。
「うん!それぞれプレースタイルが違ってさ、全然違う筈なのに、なんか」
あぁ、やっぱり――……
「バスケみたいだもん!」
君の根本には、バスケが、そしてその仲間達が、いる。
「まぁ、ルールは違うけどね。」
いたずらっ子のように笑う彼女に胸が締め付けられる。
「バスケ、ね…」
でも、だからこそ。
「さ、皆待ってるし行こう!」
「あぁ、そうだね。」
少し前を歩いていた彼女が笑いながらこちらを振り向き、俺を呼ぶ。
「はい、ラケット!」
「ふふ、ありがとう。」
俺に惚れさせる甲斐があるってもんだよね。
俺の心はまるで試合前のように昂っていた。