「おはよー!」
「あ、おはよー!」
「雪ちゃん、おはよー!」
雪が挨拶をすれば、教室にいる子たちが返す。
(私もだいぶ馴染んだなー)
棒つき飴を口に含んだまま、ぼーっとする雪の姿にクラスメイトたちが癒されている。小動物みたいで可愛いのだ。
そこに、
「雪ー!今日も可愛いわー!」
「ぐえっ」
新川梓が抱きついた。雪がつぶれている。けれど、新川梓といえばいろいろと伝説があり、はっきり言って怖いので誰も突っ込まない。
が、勇者が現れた。
「雪がお前さんの馬鹿力でしにそうぜよ。」
「うっさい仁王!雪ごめんね!可愛くて、つい!」
(お前はつい、で人を窒息させるのか……!)
クラスメイトの心情が1つになるが、誰も口には出さない。だって怖い。
「大丈夫だよー。おはよう、あずちゃん、仁王君」
「おはよう雪!」
「おはようさん。ほれ、やるぜよ。」
「ん?わわ!私のいとしのすとろべりーくりーむ…っ」
仁王が差し出した棒つき飴をキラキラとした目で見つめる雪に、
(私/俺も餌付けしたい…!)
またもクラスメイトの心情が1つになる。
「ありがとう!」
端からみれば、飼い主とペットの図である。
「ちーす!仁王着替えんのはえーよ!」
「あ、ちーす!」
「あんたは普通に挨拶もできないの?」
「ブンちゃんの動きが鈍いだけじゃ。」
普通に挨拶しただけなのに、3人中2人には貶される俺って…
丸井がうちひしがれている。
「あー…丸井君、これあげるよ。」
見かねた雪が丸井にチロルチョコを差し出した。
「さんきゅーな…!お前優しいなぁっ!」
「うわっぷ!」
可愛い系の2人がじゃれているためなんとも微笑ましいが、それをよく思わないのが若干2人。
「丸井?」
「ブンちゃん?」
「あ、あはははは…
っぎゃーっ!」
「…………よし、寝よう!」
ことの発端の彼女は現実逃避を決めた。
そして、周りはまた丸井か、と呆れた視線を送る。
これがこのクラスの日常である。