1 「ねぇねぇ、聞いた?テニス部の部室が荒らされたって話!」 第拾弍話 「皆聞いたと思うが、部室が何者かによって荒らされた」 昼休みにテニス部に緊急召集がかかり、部員が集まったところでテニスコートの前に跡部が立たち、事の次第を説明し始めた 「おそらく荒らされたのは昨日の夜、或いは今日の朝方だと思われる」 その一言にざわり、と少し騒がしくなる 「犯人を突き止めるよう努力はしている。何か見たと言う者はこのあと俺まで言いにこい。各自持ち物を確認し何か変化があった者も言いにこい。今日は以上だ、なお部活はいつも通り行う予定だ。それでは、解散!」 さすがに200人近くいる部を束ねているだけある、堂々とした態度だ。 (それにしても、ねぇ……?) あれはどうなのだろうか。ふ、と目線をもう一度コートにやると愛沢サンが跡部にベッタリだ。大方怖いだのなんだの思ってもないことを理由にくっついているのだろう (あ、愛沢サン突き飛ばされた) あそうそう、私がそんな様子をどこから見ているのかというと、 「雅さん!やっぱりあいつ……」 「あぁ、そうだね。予想通り過ぎて逆に少しつまらないぐらいだよね」 「っなら私が!」 「ふふ、駄目だよ。まだ駄目。前に話したでしょう?」 テニスコートのよく見える、音楽室だ 「これからはもう楽しいことだけだよ」 くすり、と笑いピアノの鍵盤に手を滑らせる。奏でるのはかの偉大な音楽家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの「ボナパルト」彼が敬愛するナポレオンの為に作曲したが、後にナポレオンの皇帝就任に失望した彼自身によって一度消されてしまった曲だ (彼がそうであったからといって、私も失望させないでね?愛沢サン?) ×
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