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第拾壱話

「雅っ!雅、雅、雅!!!」
「わっ」

何とかあの状況を乗りきり教室に帰ると私を待っていたらしい美歌が飛びついてきた。ぎゅうっと背中にまわされた手に力が入ったのがわかる。その瞬間一目で私は理解した。こんな状態の美歌は1番危うい。だからいつものように軽くあしらわず、彼女の言葉を待つのがここでは正解

「ねぇ、雅…ちゃんと教えて…?誰が、私の、だぁいすきな雅に、こんなことしたの?」

一言一言確かめるように紡がれた言葉には闇で塗り込められたような何かが感じられる。ふっと美歌の手元を見ると、私の数学の教科書があった(まぁばらばらに分裂してしまっているけれど)シックスナインズの確率で愛沢さんだろう、表紙にはでかでかと「ブス」だの「調子のんな」だのと書きなぐられている。確かにこれは少しいただけない
(でも……ここで邪魔されちゃう方がいただけないんだよね)

「ねぇ、美歌?私の話を聞いてくれないかな?」
(それにこんなところで失敗したらさっきの私の努力は水の泡じゃないか)
彼女の方を掴んで少し体を離して、私とおなじぐらいの目線である美歌の目をじっと見つめる
「あのね、私今とーっても楽しいゲームをしてるんだ」
「……げーむ……?」
「そう、ゲーム」

私の教科書に目をやる

「それはゲームが楽しくなるための余興なんだよ」
「っでも、なんで雅がそんなことされなきゃなんないの!?そこらへんのやつにやればいいじゃん!…………だから、ね?潰してもいいでしょ?   愛沢姫華」

……一体いつもどこから情報を仕入れてくるんだか


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