アバッキオは頭痛がする、と言ってイライラしている。
あんまりイライラし過ぎると悪化しちゃうよ、と言うとうるせえ、と言ったきり話しかけても言葉が返ってこなくなった。それが1時間前の事だ。
別に彼の短気が今に始まったことではない、多分カルシウムが足りていないのだ。
気にしない気にしない。

彼が構ってくれないならテレビでも見ようかと思ったが、音がうるせえとかまた短気らしい言葉でどやされるかもしれない。うーん困った。暇な時の為のテレビなのに、今はさっぱり役に立たない。
本でも取ってこようかな、と思ったその時

「…オイ」

「びっくりした、どうしたの?」

ソファーに寝転がってたはずのアバッキオが、本棚のある部屋の私の後ろにいた。

「ナナシ、お前よ、暇じゃねえのか?」

「暇だけど」

「あー…その、」

「何?お腹すいた?」

「いや違ェ、あーなんだ…あのよぉ」

「なに?」

珍しく弱弱しい口調だ。これは何かよっぽど言いにくいことなのか?

「ハッキリ言うけどよぉ、お前俺に構ってもらえなくて大丈夫なのか?」

「…随分なナルシストだね」

「ばっ、ちげえよ!だから言いづらかったんだ」

「んーまあ、つまんなかったっちゃあつまんなかったよね」

「…ィ」

「え?」

「悪ィ…」

「え、どうしたの?風邪でもひいてる?」

「ひいてねえよ、何だ?俺がたまに素直になるといけねえって言うのか?」

「いやそうじゃないけどさ、なんか珍しいなって思って」

「何がだよ」

「頭痛もそうだけど、そんな弱弱しいアバッキオ初めて見た。いつもキリッとしてるのに」

「そうかよ、じゃあ今回で見納めだな」

「えー、つまんない。ね、何でそんな申し訳なさげに言ってきたの?」

「…俺が家に来いって誘っただろ」

「ふんふん」

「で、だ。誘った張本人が頭痛だとかでへばってる」

「ほうほう」

「オメーが来たってのに、その、ちゃんと構ってやれねえことが気になった」

「それでそれで?」

「お前人の興味ないだろ」

「あります」

彼はとても短気だ。短気で口も悪い。多分カルシウムが足りてない。でもとっても愛しい人。かっこよくて優しくて。私の事が大好きな、とっても愛しい人!














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