ナナシ、今の内にお前にこれを書いていく。
今度の任務は今までのどの任務よりもヤバイやつだ。その証拠に、今まで任務に行ったヤツが、誰も帰ってきてないだろう。
だがなナナシ、俺は何があってもお前の所に戻る、絶対だ。他の奴らが例え戻らなくても俺は絶対に生きて、お前の所に戻る。お前の泣き喚いてグシャグシャに化粧が崩れた顔は見たくねーからな。俺と対等に接する女は、いつだって完璧な状態でなくちゃあいけないんだ。今更かもしれねえが俺はお前が好きだ。大好きだ。愛してる。本当ならこんな手紙なんて必要ねえんだ。でも、俺にだってイザってことがあるかも知れない。俺がこんな泣き言を言うぐらい、今回の任務に俺は全てを懸けている。懸けているしそれが今までの仲間への礼儀ってもんだろ。
もし俺が帰ってこなかったら、何もかも忘れて国に帰るんだ。アジトからお前に繋がるもの全てを片付けてイタリアから逃げろ。お前はイタリアに住んだこともないし、ましてやヤバい組織になんて髪の毛一本ほどの関わりも無いですって言う風に生きろ。いいか、生きるんだ。何があっても生きていくんだ。散々人を殺してきた俺が言うのもおかしいが、俺はお前に生きていてほしい。欲を言うなら俺だって生きていたい。生きてお前のもとへ帰って、また騒がしい日常を当たり前に過ごしたい。
もう一度言っておく、俺が帰らなくても、お前は日本へ帰って生きろ。




















信じたくなかった。嘘でしょう、プロシュート。あの傲慢でわがままで、自分にも仲間にも厳しかった貴方がこんなジメジメした手紙を残して死んでしまうなんて。しかも生きていろと来たもんだ。生きていろってどうすればいいのよ。私は貴方と同じギャングの一員で、人殺しなのよ。そんな女が今更足を洗って何食わぬ顔をして生活していけって言うの?それに私、貴方がいないと生きていけない。最初、貴方から告白された時、たくさんいる女の内の一人になんてなりたくなくて断ったのよ。なのに、何度も何度も真面目な顔してお前以外の女なんて必要ねえ、って言ってくれた。嬉しかった。本当に嬉しかった。大好き。大好きよプロシュート、だから帰ってきて。またアジトに集まって冷たい目を向けられながらイチャイチャしようよ、ねえ。ほんとは死んでないんでしょう?またいつものサプライズなんでしょう?もう充分だから、ネタばらししなさいよ!帰ってきて。私、貴方を愛しているのよ。恋人を悲しませるなんてイタリア人の男として最低じゃない!─────













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