「はぁッ…クッソ…」

痛がる手負いギャング、アバッキオ

「ちょっとアバッキオ!!」

そこへやかましい女が突入してきた。

「はぁ、うるせぇ、静かにしてろ」

どうしてナナシがアバッキオが負傷したことを知っているのか。大方ブチャラティから連絡が行ったのだろう。
二人は恋人同士である。

「ちょっとそんなこと言ってる場合じゃないでしょ…!、あ、あ、救急箱…!」

「ナナシ急いでくれ…痛ェ…」

「分かってるよォ!ああーもう救急箱どこよもおおおおナランチャが片付けないからああああ!!」

「うるせェよテメェ…あれだ、はぁ、あっちの部屋の棚だ多分」

「あ、はい…」







「アバッキオぉぉ〜…」

「…ッ、」

「死なないでェ!!」

「バカか、死なねえから、さ、っさとしやがれ…」

「うう血が…大丈夫?水飲む?喉渇いてない?」

「渇いた…ハァ、なんとか、死なずに済んだみてーだな…」

「そんなギリギリだったの…」

「早く水持ってきやがれ…」

「あっうん、ちょっと待ってて」


(ホントに、よくくたばらなかったよなァ俺…)

正直なところ、今回の任務はマジにやばかった。なんたってこの俺がここまでボロボロになるくらいだ。油断したとかじゃねえ、もう一人つけるか、というブチャラティの提案を俺は断った。生意気で憎たらしい新人がいる前で、ああ頼むよなんて口が裂けても言えねえ。それがこの結果だ。オマケに恋人であるナナシに手当てまでさせちまう始末。あーみっともねえなあ。格好つける為に任務をこなす訳じゃねえが、無傷で、余裕綽々で終わらせるほうが格好がつく。こんな怪我を負っても俺はこんな事を考えてんだから、攻撃がアタマにまでいっちまったのか。

「はい、水」

「…グラッツェ」

アバッキオはミネラルウォーターを一気に飲んだ。足りなくなった血液を補うごとく、みるみるうちにペットボトルは空になった。

「…はあ」

「そんなに一気に飲んだら下すよ」

「下す以前に重症だから関係ねえだろ…」

「…」

「ッ!痛えボケっ!」

「あっ、あスイマセン…ごめんね」

なんだか何をするにも空回りする気がしてアバッキオに抱きついてしまった。怪我だらけの彼は非常に痛かっただろう。

「…別に、謝んじゃねえよ」

「いや、痛かったでしょ、ごめんね」

「こんな怪我全然問題ねーな、ナナシよォ、俺は手首を切り落としたことだってあるぜ」

「ウヘァ…もう大人しくしなよ…うん、ちゃんと休んで治して?」

「三日もかからねえな」

「強がるんじゃないよこんな時に。それに、ブチャラティから言われたの」

「なんて」

「私の目から見て、怪我が治るまでちゃんと休ませろって」

「…そうかよ」

「アバッキオの開いた分はちゃんと埋めるって、ジョルノが」

「あア?あのガキに俺の代わりが務まるってのかよ」

眉間に皺を寄せる。怪我人のくせにこの威圧感はなんだ。

「もう、そんなイライラしてたら治る物も治らないよ!さっさとベッド行こうねーいいこだからねー」

「クソガキ…いいかナナシ、アイツに俺の穴埋めはできねえ、ゼッテーに無理だ。」

「そりゃアバッキオもピンピンしてたらそうかもしれないけど、あなたは今怪我人なの、そんなんで任務なんて、足を引っ張るだけよ」

「…ッ、俺は完治に三日もかからねえからな」

「一日で治るくらいつきっきりで看病してやるから感謝しなさい」












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