「でさ、キミは途中下車することになった訳だけど、旅は道連れって言うだろ、だからあんまり深く考えるなよ!」

(なにこいつ)

「うーんそうだな、とりあえずお茶でもしよう!キミ喉渇いてない?」

「ハァ…」

「よーし行こう!!そんな心配するなよ!人生一期一会を大切にしなきゃなあ!」

この男なんでこんな日本っぽいことを言うのだろう。博識なのかしら。




「改めて、俺はメローネ。ヨロシクなナナシ!」

「あ、ハイ…」

「何も取って食おうって訳じゃないんだからさァ〜〜〜もっとリラックスしなよ、デートなんだから」

「これデートって言うんですかァ?拉致じゃないっすか…」

「敬語もやめような!」

「人の話聞けませんか?」

「キミこそ敬語やめようよ」

「…むかつく」

「ん?」

「なんでもない。で、マジな話、私になんの用なの?」

「ん〜、そうだなァ、ぶっちゃけると、俺は殺人から麻薬置き引きなんでもござれのやばい組織の一員なんだ」

「…」

「ギャングってヤツだよ、聞いたことあるだろ?で、」

「無理無理!!私帰る!!」

ナナシは勢いよく立ち上がる。周囲の客が何事かと視線を向けたが、男女仲のもつれのように見えたのだろう、すぐに注目は収まった。

「キミは人の話をほんとに最後まで聞かないな」

「だって、ギャングって、アレですよね、マフィアとかヤクザとか…そっち系ですよね」

「そうそう、でもそんな怖いモンじゃないよ!第一オレはナナシを売り飛ばすとかそういう目的じゃないしね!何回も言ってるけど、ナナシをもっと知りたいんだ!」

「嫌だよぉ…お母さん…」

「だから、そんなネガティブにならないでくれ!あ、オレの話だけじゃ信用できないのか、よ〜〜〜しじゃあこれからアジトへ行こう!そうすればきっと本当だって分かるから!」

「いや、そうじゃないって!あのね、アナタがやばい組織の人なのは百パーセント分かってるの!そんな組織と接点とか持ちたくないの!ねえ、理解できる?」

最早ここまで来ると懇願だ。

「大丈夫大丈夫、オレ以外の男には近づけないし指一本触れさせないし」

「今さっきアジト連れてくって言ったじゃん!」

「!ナナシ!アジトに来る気になった!?」

「あっ…いや、今のは言葉のアヤって言うか…」

「そっかそっかァ〜〜〜そんなにアジトに行きたいのか、今日ちょっと肌寒いしな!ごめんな気がつかなくて!」

「すっごい晴れてるけど…いや、アジトはまじで無理!怖いし!」

「そんな怖い所じゃあないぜ!仕事は怖いかもしれないけど、プライベートはみんな意外とお茶目なモンだ」

「そんなん知らん…!」

メローネはテーブルに大目のお金を置いて、ナナシと腕をガッッシリと掴み店を出た。


(このまま振りほどいて走って逃げれないかなあ…それかこの人ひったくりですとか喚いて民衆の注目を集めればさすがにこの男もうろたえるかも)

「さあ着いた、ここだ」

「えっ!?もう!?はやっ」

さっきいた喫茶店から歩いて2分くらいのところにアジトはあった。一見普通のビルだ。

「こんな普通のビルで血生臭い銃撃戦が…ああ嫌だ…」

「妄想しすぎだナナシ」

「…他の住民に危害とかないの?」

「あ、このビル俺達以外誰も住んでないぞ!だから声は我慢しなくていいからな!ウフフ」

「はああああ〜〜??」

「ただいまー!」

「…誰だ」

「ああ、ナナシだよ!オレの恋人!かわいいだろ!?」

(うわ…うわぁ…超怖いこの人…ガタイやばい…)

ナナシはメローネの後ろに隠れた。

「何で連れてきた」

「ナナシがアジトにどうしても来たいって聞かなくてさあ、」

「ちょっと無理矢理連れてきたんでしょうが!」

「まあそうでもないような感じ!」

「連れてきてどうするつもりだ」

「ん〜…」

「あ、あの、私失礼しますね!お邪魔しましたーーーー!!!!」

ナナシは大声でそう言うと腰を90度に曲げておぎじをして、走って逃げた!

「あ、逃げられた」

「恋人でもなんでもないみたいだな」

「うふ、シャイなんだなア〜!ジャッポネーゼはいいね!初々しくてさ!」

「…あいつは」

「あ、大丈夫だと思うよリーダー!ホントにただの一般人だ!」

「どうだろうな」

「それよりあの子、一人で走っちゃってるけど土地勘ないよなァ」

もうリーダーはメローネの話を聞いていない。

「こんな外国で顔見知りはオレ一人…ベネ、非常にいい感じだ」


あの子は絶対、もう一度ここへ来る。メローネは確信している。




続く



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