フーゴのスーツを見ていつも思うんだけど、あんなんじゃ衣服としての機能が全く果たせていないんじゃないか。防寒とか出来ているんだろうか。あの服は着ても着てなくても変わらない気がする。
「ねえフーゴ、明日は空いてる?」
「空いてます」
「あのさ、新しい服買えば?」
「はあ?」
「なんなら私が見繕ってあげるからさ」
「結構です」
「て言うかね、そんな穴ぼこだらけの服着てる意味ないと思うんだよね」
「ほっといてください」
「寒くないの?」
「あんまり気にならないですね」
「うそ、私フーゴ鳥肌立ってるの結構見るよ」
「…たまたまです」
「ね、やせ我慢しないでさ、買いに行こうよ」
「いいですってば…何するんです」
「いや、こんな素肌さらけ出してたら色々マズイんでない?と思って」
ナナシはスーツの穴に指を突っ込む。
「こうやって私みたいな女にお腹触られたりするよ」
「それは嫌ですね」
「女ならまだいいよ、変なオッサンとかになんかされたらどうするの」
「ボコボコにします」
「そうなる前に買いに行こうよ」
「ハァ…あなたもしつこいですね、僕はこの服がいいんです」
「いや、絶対不便でしょその服」
「そうでもないんですよ」
「なんでニヤニヤしてるの」
「いや、くだらないことです」
そう、僕はこの服が好きなんだ。こうやってナナシが構ってくれるから。正直ナナシの指摘通りで結構寒いこともある。くすぐったいのは嫌だけど、彼女がボディータッチしてくるのは嬉しいから、僕はこれからもこの服を着るんだろう。
私は正直この服もフーゴの魅力の一つだと思っている。穴からフーゴのお腹とか腕とかを直接触れるし、鳥肌が立っているのを見ると、彼もちゃんとした人間なんだって思えてすごく安心する。でも、私だって女の子だ。たまにはショッピングとかお茶とか、デートっぽいこともしてみたい。だから私は彼を誘うのだ。
「ねえフーゴ、服見に行こうよ」