俺と女が向き合ってどれぐらいの時間が経ったのだろう。
俺はいつも通りターゲットを殺してその場を去ろうとした。そこへ現れた女。目の前の死体を見て泣き喚いたり、取り乱したりしないところを見ると、恐らく同業者だろう。
「おい」
女は死体から視線をこっちにやった。返事はない。
「そこで何をしている」
「通りがかっただけ」
「嘘をついてるな」
「じゃあ最初っから聞かないで。これ全部、あなたがやったの?」
「ああ」
「たった一人でこんな大勢を殺したの?」
「そうだ」
「どうやって」
「それは言えない」
「あなた、只者じゃないでしょう」
「さあな」
「どっかの組織に入ってるの?」
「さあ」
「私、あなたのこと気に入っちゃった」
「…何を言ってるんだ」
「こんなに大勢を相手に、しかも殴ったりした跡もないわ。出血は凄いけど、外傷も目立たないし」
「…」
「こんな殺し屋に出会ったことないもの!大体はボコボコにするとか銃殺とかでしょう?」
「お前」
「ナナシ」
「…お前、さっきから何を言ってるんだ。」
「どうやったらこんな効率よく殺せるのか知りたい」
「お前には無理だ」
「なん… !」
「今の俺の動きが読めたか?」
女の足首からクギが飛び出している。実は先程からずっとメタリカを出していたが女は全く反応しない。コイツはスタンド使いでもなんでもない、ただの殺し屋なんだろう。
「なに…!?」
「これが俺のやり方だ」
「なんで…?どうやって…」
「お前には一生分からないだろう」
「っ…あなた」
「…」
「さっきから後ろに見えてる、その、お化けみたいなやつで殺すの?」
「…!」
「こんな残酷なのに、なんか小さくてちょっとかわいい…」
「お前、見えるのか」
「さっきからずっと」
ああ、コイツは見えるのか。スタンド使いなのか。さっきから見えていたというのに、驚くような素振りも見せなかった。普通なら目線がスタンドの方に行ったりするものだろう。この女は驚くどころか、視線もぶれなかった。
「ねえ、これは一体なんなの?」
「…さあな」
「私、最近このお化けみたいなの自分にも現れたんだけど」
「スタンドだ」
「え?」
「スタンドって言うんだ、お化けじゃない」
「初めてちゃんと喋ってくれたわね、あなた、名前は?」
「…リゾット」
「私、さっき名前言ったんだけど覚えてるかしら」
「…さあな」