「ごめん!!!」
「…」
彼、アバッキオは今まで見たこともないような不機嫌極まりない顔をこちらに向けた。私は彼とのデートに大遅刻してしまったのだ。しかも寝坊だ。起きたら3件の着信があった。髪のセットもそこそこに、とにかく大急ぎで準備して待ち合わせ場所へと向かった。
(やばい…久しぶりのデートなのに髪適当だし服装もあんまり可愛くないかも)
だが、今心配するべきはそんな事ではない。目の前を遠慮せず大股で歩くアバッキオの機嫌をなんとかしなければならない。
「アバッキオ」
「」
「アバッキオー、ねえ」
「何か言う事ねえのか」
「、ごめんなさい」
「どうしたんだよ」
「昨日遅くまで起きてて」
「なんで」
「あー、仕事でさ」
「昨日テメー休みだったろ」
「!」
「ブチャラティから聞いたぜ」
「…」
ブチャラティ余計なことを…!
「テメーは俺にそんな嘘つくような奴じゃねえよな?何があったかちゃんと話しやがれ」
「あのね、笑わないで聞いてほしいんだけどね、デートが楽しみで寝れませんでした」
「ハァ?」
「デートが楽しみで寝れませんでしたっ!!」
「あっそ」
私の話をさも興味ありませんと言った風にスタスタと歩く。理由をちゃんと話したのに、あっその一言で片付けられてしまった。やばい、コレは相当怒ってる。
「アバッキオ」
「」
「…ッスン」
「…」
私は泣いているのではなく鼻をすする真似をした。彼はこうすると、私が泣いているのではないかと思い反応してくれると、長い付き合いのなかで知ったのだ。
「本当にごめんなさい」
「まあ俺も大人だから許してやる」
「うふふ、ありがとう」
「…チッ」
「舌打ちした?」
「アァ?うっせーぞ」
いつの間にか歩くスピードが私と揃っている。彼はやっぱり不機嫌な顔をしている。
「アバッキオ、好き」