「よぉ」
「…えっ、ぷろ、プロシュート」
「なんだよその顔は」
「いや、あ、あの、生きてたんだ」
「ハッ、俺が死ぬわけねえだろ」
ナナシは息が止まるほどビックリしていた。プロシュートは任務に行ったきり2週間も帰ってこなかった。まあ、彼のことだからどっか女のところに転がり込んでたのかもしれない。でもナナシには自信があった。彼は絶対にナナシを見捨てたりしない。思い上がりかもしれないが、プロシュートはナナシにしつこく想いをぶつけていたし、任務が終わるとどこかのバールで一杯やることもなくなり、まっすぐナナシのいるアジトへ帰ってくるようになった。今回のように2週間も帰ってこなかったらそら心配にもなる。ひどい話、ナナシは彼が死んだとも思っていた。
「あーーーー疲れた
、何だよその顔」遠慮なしにソファーに沈み込む。
「いや、おかえりなさい…」
「あーーーーーーー」
「何なのさっきから、あーって」
「いや、おかえりなさいっていいなァ」
「そういうの似合わない」
「あァ?」
「そういうのは一家の主が言うべきもんよ」
「全く理解できねーなァ!」
「パードレが言うのが正しいの」
「俺がなってやろうか」
「そういう冗談も似合わないわ」
「ハン、どうだかな」
冗談、と言ったことを否定も肯定もしない。自分の運命を彼はよく分かっている。父親になるということの重大さも分かっている。彼らのような者の未来はきっと明るくない。組織のボスほどの人物でもたった一人の娘に、躍起になっている。子ども、と言うのものはそれくらい影響を及ぼすのだ。
「俺はちゃんと教育できるぜ」
「あんた絶対、子どもを崖から突き落とすタイプでしょ」
「そうしねえと腑抜けな人間になるからなァ」
「かわいそうな子…」
「なに言ってんだ、ギャング同士の子どもが腑抜けでどうすんだよ」
「私はギャングにはなってほしくないけどね」
「…そうかもしれねえなあ」
「でしょ」
「だったら子ども作って試してみるか?」
ソファーが沈んだ。