「はあァァァ〜〜〜…」

「ドウシタンダヨミスタッ」

「…俺の大好きなナナシともう一週間も会ってねんだよォ…」

「アイニイケバイイダロオ!」

「何かよオ、アイツは一般人で犯罪なんかちっともやったことねえカタギだしよォ、何かちょっとびびっちまうぜェ〜」

「カイショナシダナ!」

「うっせーよー、俺といる所をよくない奴らに見られたりしたらどうすんだよォ」

「シマツシチャエバイイヨッ」

「あーっ、もうナナシのことしか考えられねェ!」

「アーアミスタジュウショウダゼ」

「ナナシに会いてえよオ〜、電話なんかじゃ全っ然足りねえよオ〜」

「うるさいですね」

長い足を組みながらソファーに掛け、雑誌を読んでいるジョルノが言う。

「オイオイオイオイジョルノ、お前もっと労わってくれよなア」

「ピストルズの言うとおりです、ナナシに連絡すればいいじゃないですか」

「いいか!?この時間ナナシはカフェでバイト中なんだよ!電話したって出れねえだろうがよォ〜」

「なんも今じゃなくたって、夜にでもデートの約束すればいいでしょう」

ジョルノは心底鬱陶しそうにミスタを見る。一方ミスタはあーでもないこーでもないと言った感じで、まるで演劇のようにうろうろしている。

「俺は今!今ナナシの声を聞きたいんだよォ〜ッ!」

「さっき電話じゃ足りないとか言ってたくせに…」

「あっお前人の話勝手に聞くなよなぁ」

「じゃあもっと静かにしててください」

(つれない15歳だよなァ〜)


自分で言っといて何だが、今電話したい。声が聞きたい。バイト中だとしても電話を取れるかもしれない。電話しよう。

プルルルルル

プルルルルル

プルルルルル

『プロント?』

「オォっ、プロント俺俺!俺だよ!」

『ウチに事故るような孫はいないですよ』

「はあナナシ何言ってんだ?」

『うそうそ、ジャッポネーゼジョーク』

「何だよそれ、それよりナナシ元気かあ?」

『元気だよー、どうしたの急に』

「いやー最近会えてねえなって思ってよオ」

『ぶっ…最近って、先週デートしたじゃない』

「いや先週は先週だろォ〜?月曜になったらまたリセットされんだよオ」

『それは知らなかったわ。それに一週間の始まりは日曜日よ』

「細かいことはいい!ナナシ今電話してて大丈夫なのか?」

『あーうん、休憩中だったから』

「うは、俺ってナイスタイミング!やっぱさぁ〜恋人同士って何か分かりあえるモンがあるのかもなァ〜!」

『大袈裟だね〜』

「ちげえ、ロマンチストなの俺は!」

『ははは、ミスタがロマンチストねぇ〜!』

「何だよ不満かあ?もっと甘〜いこと言ってやろうかァ?」

『いやだ、糖尿になっちゃう』

「お前、もうちょい可愛げあること言えよなぁ〜」

ああ幸せだ。やっぱりナナシがいないと俺は生きていけねえな。正直、カタギの人間と付き合っていいものか柄にも無く悩んだ時期もあった。でも世界に一人ぐらいは、女にメロメロでズルズルで甘いことを言うギャングがいてもいいはずだ。


「ジョルノ、ミスタは?」

「奥の部屋にいます」

「そう、ちょうど彼に頼みたいことがあったんだ」

「…いやフーゴ、今はやめておいた方が」

「え?」

「今、彼はメロメロのズルズルになってるはずですから」

「…ああ、何となく分かったよ、うん」

「彼もここの所忙しかったんです、邪魔しないであげましょう」

「(…大人びた15歳だよなあ)」













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