■ 桜と満月と

「あっ、ちーちゃん。」


俺を“ちーちゃん”などと呼ぶヤツは一人しかいない。


『貴様、その名で呼ぶなと何度言ったらわかる。』


「えー、ちーちゃんはちーちゃんだよー。」


そう言いながら、俺の横にくる愛。


『今日は一人か?』


「うん。今日はお花見しようと思って。」


花見とは一人でするものか?


『他の奴らはどうした。』


「んー、なんか知らないうちにはぐれちゃったみたい。あはっ」


呑気に笑う愛。


『何をやっているんだ、幕府の犬共は。』


ただでさえ、フラフラしているコイツを
一人になどしおって。


少し呆れていると


「幕府の犬じゃないし!新選組なの。」


フンッと頬を膨らませながら


「ちーちゃんはいい男なのに態度、デカすぎるよ。せっかく、私好みなのに。」


――っ。不意をつかれたな。


コイツはたまにハッキリした物言いで“好き”だの“好み”だのと言ってくる。


『ふん。貴様に好かれぬとて困りはせぬ。』


「ちーちゃん、やっぱり態度でかいね。」


あははと笑う愛がふと、悲しい目をしたのを見逃さなかった。


愛は未来から来たらしく、京の町には詳しくはない。


そんななか、あ奴らとはぐれて寂しかったのであろう。


『おい、行くぞ。』


「え?どこに。」


『花見だ。その為に出てきたのであろう。』


「う、うん。でも、いいの?」


『俺の用事は済んでいる、どうせ貴様は屯所の場所もわからんだろう。』


「…………。」


『ついでだ、花見も連れて行ってやろう。』


「ありがとう!」


そう言って俺の後をついて来る愛。


「ちーちゃんは優しいね。」


『ふん。ほって置いて貴様に何かあってもシャクにさわるからな。』


「フフ。」


そんな会話をしながら桜が満開に咲く神社についた。


「わぁ、綺麗。」


『そうだな。今宵は満月だ、月明かりで美しく見えるな。』


そう言って俺は愛を見た。


「ちーちゃんにも夜桜の良さがわかるんだね。あはっ」


笑顔で桜を見上げる愛。


『あぁ、とても綺麗だ。』


いつも見ているお前がとても美しいと思った。


桜と満月と愛。


とても心が和んだ。


『綺麗なのはお前だ。』


そう呟いた俺をお前は気付いていないだろう………










=あとがき=
ちー様難しいです(-.-;)
こんな感じで大丈夫ですかね?

愛様、最後まで読んで頂きありがとうございました♪
2012.5.31

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