■ 俺の萌え処[後編]
バシンッ
『!?』
何かを叩く音がした教室へと急いだ。
そこには愛と雪村が居た。
明らかに愛の頬は腫れていて、雪村に叩かれたとわかった。
『雪…総司!?』
俺はその光景を見て飛び出そうとしたが総司の手によって止められた。
『何ゆえ、止める!』
衣装をズタズタにし、頬まで叩いた雪村を許してはおけない。
だが、総司は俺を見て
「一君、君に黙ってた事があるんだ…愛ちゃんは全部知ってるんだよ。」
『なに!?だが、知っているからといって止める理由にはならん!』
「愛ちゃんに頼まれたんだ。私が解決するから一君を止めてほしいって。」
『………わかった。』
真剣な目で少し悲しそうな顔をする総司を見て、俺は少し落ち着いて愛達を見守ることにした。
愛と雪村は未だ俺達が見ていることには気付かず話し始めた。
「私、やってないって言ってるじゃない!」
「千鶴ちゃん…もう嘘つくのやめよう。全部知ってるよ、衣装のことも体操着の時も…私、見てたから…」
「…!?じゃあ、なんで体操着の時、私を庇ったの!?」
愛の“知ってる”の言葉に雪村は動揺し愛に掴みかかった。
でも、愛はそれを避けようとも払いもせず雪村を抱き締めた。
「は、放してっ!!」
「嫌だよ。放さない…だって千鶴ちゃん泣きたいんでしょ?」
「……グスッ」
その言葉で雪村は動きを止め泣き始めた。
愛は優しく雪村の頭を撫でながら
「千鶴ちゃん、一ちゃんのこと好きなんだよね?私、知りながら一ちゃんに告白しちゃったの…ごめんね。元は私が悪いの…だから体操着の時は仕方ないって思った。だから一ちゃんにも千鶴ちゃんじゃないって言った。」
「…………」
「でもね、今回のは許せないよ?だって私だけじゃなく周りの人達にも迷惑かけたんだよ、わかるよね?」
「……うん。」
「私だけの事なら私が我慢すればいい…でも今回のはいくらなんでもダメだよね…私が見付けた後すぐにお千ちゃんが見て泣きそうな顔してたんだよ。だから…」
愛は雪村を放し、手を雪村の頬目掛け大きくふった。
俺と総司は愛を止めに入ろうとしたが
「…………」
雪村も叩かれると思って目を瞑っていたが一向にそんな音はせず
「千鶴ちゃん、もうしちゃダメだよーー。」
と雪村の両頬を軽く引っ張っていた。
そんな光景を見て思わず俺と総司は見合せ笑ってしまった。
「あー、一ちゃんに沖田総司まで来てたんだぁ。」
と少し驚いた顔でこちらに振り向く愛。
「だからなんで僕はフルネームかな?一応君の先輩なんだけど。」
「それは貴方が恋敵だからです!」
なんていつも通りに話す愛。
そして俺を見て笑顔を作り、雪村の方を向いた。
「千鶴ちゃん、もうしないよね?」
「うん…ごめんね、愛ちゃん…」
「いいよ!じゃあこれからはまた友達として、恋のライバルとしてよろしくね?」
「え?」
「まぁ私も一ちゃんに超ラブなんで負けるつもりはないけどね!」
「う、うん!」
そう言って愛と雪村は握手を交わした。
「あー、“超ラブ”だってウザイよ。愛ちゃん。」
「うるさい、沖田総司!」
またいつもの二人の会話が始まり、それを見ながら雪村は笑い俺のもとへと来た。
「斎藤先輩…ごめんなさい。今まで愛ちゃんに対して酷い事をしてきました。本当にごめんなさい…でもこれからは堂々とアピールしますから!」
そう言って雪村は出ていった。
そして愛の方を見ると既に総司も居らず二人っきりだった。
「一ちゃん…千鶴ちゃん許してあげてね?」
俺は愛を抱き締めた。
『愛、あんたというやつは…』
俺はとてもよい彼女が出来たものだ。
決して怒りを露にせず、優しく相手を気遣うなど俺には出来ぬ事だ。
「一ちゃん…大好きだよ。」
『あぁ…俺も“超ラブ”というやつだ。』
「…………」
黙る愛を見てみると顔を真っ赤にしているがフルフルとなりながら目を輝かせ
「…え、萌えですよ!一ちゃんの“超ラブ”萌えーー!!!」
そう言って走って出ていってしまった。
『クスッ、俺はあんたのそういう行動に萌えだ。』
俺の一言に照れを隠すように“萌え”などと言って毎回走り去る。
そんな愛が可愛くて愛しい。
それが俺の萌え処かも知れない―――
=あとがき=
やっと終わりました♪
グダグダすいません(;A´▽`A
愛様、最後まで読んで頂きありがとうございました♪
2013.4.8
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