■ 愛の形

朝も夜も時間もわからない、暗い部屋にベッドが一つ。


ここに閉じ込められて、何日、何ヶ月たったのだろう…


ガチャッ


「いい子にしてたか。」


『お帰りなさい、歳三さん…。』


いつものように横に座り、頭を撫でてくれる彼。


『あの…一度、家に帰してもらえませんか…。』


頭を撫でている手を止め、


「なんで、そんなこと言うんだ。」


キリキリと指が食い込むくらいに腕を掴んだ。


『歳三さん、痛いよ。』


バッと手を放し、黙って部屋を出ていく歳三さん。


怒らせてしまったかと不安になったが、私はベッドの脚に付けられた鎖が動きを止めた。


『……グスッ、ごめんなさい、ごめんなさい。』


どれくらいたったのだろうか…泣きすぎて声すら出なくなってきた時


ゆっくり扉が開き、スッとベッドの上におぼんが置かれた。


「少しは反省したか?泣いたら腹減っただろ。」


おぼんの上には私の大好きなオムライスが置いてあった。


『ごめんなさい。歳三さん…。』


私の涙を指で拭いながら


「お前は俺だけの傍にいればいいんだよ。」


わかってる。
彼が私を愛していることも、なぜこんなことをするのかも。


彼は不器用だから…
歪んだ形でしか愛を伝えられない。


だって、こんなにも優しい目をしているのだから…


「生活出来るようになんでも用意してるじゃねぇか…それなのに、俺から離れてぇのか?愛…。」


『ち、違うのっ!ただ「何が違うんだよ、現に家に帰りてぇって言ったじゃねぇか!」』


勢いよく私を押し倒し、首に手を伸ばす歳三さん。


「なんで、わかんねぇんだよ。こんなにもお前を…愛を愛してるのに。」


そう言った彼の頬には涙が伝っていた。


『…ち…がう…の…ゴホッ』


首を絞められ、伝えたい事を言えなくて苦しむ私を見て


「誰にも渡さねぇ、触れさせねぇ。」


更に強く首を絞める歳三さんに、力を振り絞り


『愛…して…るの…とし…ぞ…うさ…ん。』


彼の手がバッと放され


「すまねぇ、愛。許してくれ。」


ふわりと割れ物に触れるように優しく抱きしめられた。


『私は…ゴホッ、ただ荷物をまとめてきたかったの…。』


ビクッとなり、黙って私を見る歳三さん。


『私も貴方から離れたくないんですよ。だからここにすべてを持ってきたいんです。』


「そうか…でも、お前の家には俺が行く。わかったか。」


彼はどうしても、私を誰にも会わせたくないのだろう。


私には貴方だけなのに…
私の愛には気付いてる?


『わかった。鍵は持ってるよね?お願いしますね。』


そう言って彼の手を握った。


「あぁ。じゃあ、行ってくる。大人しく待ってろよ。」


そして、また部屋の鍵をかけ出ていく歳三さん。


周りから見れば異常かもしれない。


でも、今はそれでよかったと思ってる。


だって、彼は私しか見れなくなっているのだから…


怒るのをわかってて、“家に帰して”なんて、
彼の愛を確かめる私も異常かもしれない―――










=あとがき=
アンケートに狂愛とありましたので書いてみました(o^∀^o)

愛様、最後まで読んで頂きありがとうございました♪
2012.6.11

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