■ 初恋
「原田先生!」
笑顔で原田に駆け寄る桜彼。
「どうした?愛。」
職員室の俺の前で仲良く喋る二人。
最初はただ質問で来ていたのかと思っていた。
でも、あの日俺は見てしまった。
*******
いつものように屋上で煙草を吸っていた。
ギーッ
『ん?誰か来たのか。』
扉に向かうと
『原……っ!?』
「愛…」
「左之助さん…」
抱き合う二人が見えた。
原田が愛しそうに桜彼の髪を撫で、顎に手を添える。
「あっ、駄目ですよ。学校なんですから。」
そう言って顔を背ける桜彼に原田が耳元で何か囁き
「もぅ、今日だけですよ。」
頬を赤く染め、キスをする二人。
俺は胸が締め付けられ、物陰に身を潜めた。
「愛、愛してる…」
「私も愛してます、左之助さん…」
聞きたくねぇ。
原田に向けられた桜彼の甘い言葉が俺を苦しめる…
いつの間にか踏み潰していた煙草を見つめ、拳を握る。
この数分が何時間にも思えた。
二人が去り、俺はその場にしゃがみ込んだ。
『嘘…だろ。』
俺は桜彼が好きだった。
教師と生徒、そう言い聞かせ気持ちを抑えていたのになんで…
その日から俺は遠目で二人を見ていた。
まだ俺にもチャンスがあるかも知れねぇと。
*******
あの後、質問を終えたのかいつの間にか桜彼は職員室に居なかった。
不意に原田を見ると
鼻歌を歌いながら帰る用意をしていた。
『原田、なんかいいことでもあったのか。』
「おう。あっそうだ、土方さんには言っとかねぇとな。」
『ん、なんだ?』
「実は俺、結婚したんだ。で、家で待ってるからついな。」
結…婚……?
ビックリして黙っていると
「わりぃ、言うのが遅くなっちまって。」
動揺を隠せない俺は知りたい事を聞いた。
『お、お前にそんな相手が居たのかよ。』
「え、あぁ、まぁな。今はアイツが忙しいから会わせられねぇが来月には紹介するぜ。」
やっぱり…相手は桜彼か。
来月、桜彼は卒業する。
俺の入る隙はなかったってことか。
初めて恋しいと、愛しいと想った女。
これが初恋だったのかも知れねぇ。
そう思えた女だからこそ、幸せになってほしい…
『そうか、大事にしてやれよ。』
原田にそれだけを言い、屋上に向かった。
煙草に火を付け、空を見上げた。
『初恋は実らねぇ…もの…か。』
そう言った俺の頬を一筋の涙が流れた。
=あとがき=
アンケートに土方先生の悲恋とありましたので書いて見ましたがいかがでしたでしょうか(>_<)
こんな感じが悲恋っぽいかと…なんか違ってたらごめんなさい”(ノ><)ノ
愛様、最後まで読んで頂きありがとうございました♪
2012.6.5
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