【06】 原田先生が去り、私は先程の光景を見られてしまった事に焦りだした。 『どうしよう…』 原田先生に誤解されたかも知れないという不安から涙が込み上げてきた。 「愛那…、すまねぇ。」 そう言って優しく私の涙を隠すように抱きしめてくれる土方先生。 『ごめんなさい…やっぱり私…』 「あぁ、わかってる。わかってるから謝るな。」 私の涙を拭ってくれる土方先生に私は何も言えなかった。 「落ち着いたか?」 『はい…すいません。先生、会議があるのに。』 「気にするな。俺がしたくてしてんだ。」 土方先生の優しさが私の心を締め付ける。 けれど、私は原田先生を諦めれないと気付いてしまった。 そんな私の気持ちに気付いたのか土方先生は目を細め、哀しそうな笑みで 「愛那、お前は笑ってろ。俺が気持ちを伝えた様にお前も頑張ってみろ。その気持ちは原田に伝わるはずだ。」 『土方先生…』 生徒と教師と言う立場にありながら気持ちを伝えてくれた土方先生。 彼は私の背中を押してくれた。 『今すぐは無理かもしれません。でも、私頑張ってみます!』 「あぁ、頑張れよ。」 『土方先生、こんな私を好きになってくれてありがとうございます!』 土方先生に笑顔てお辞儀をして図書室を後にした。 私は久しぶりに心から笑えたような気がした。 「俺はお前のその笑顔が見たかったんだ。………さ、会議に行くか。」 弱気な私に勇気をくれた土方先生 私はもうこの笑顔を忘れない [しおりを挟む] 8 / 8 [ back ] |