■ 貴方と私の距離の先に[中編]

「左之さん!聞いてるの?」


『…あ、わりぃ。』


「彼女とデートしてるのに何考えてるの!?今日はもう帰る!!」


『すまねぇ…』


「止めようともしないんだね?左之さん、最近おかしいよ!!」


そう言って出ていく彼女を黙って見ていた。


最近、後輩だ可愛い妹分だと思っていた愛が気になって仕方ねぇ。


今までずっと彼女が1番で他なんて目に入らねぇくらい好きだと思ってた、けど…


そんな彼女が笑顔で“左之さん”なんて呼ぶと
会社で俺を呼ぶ愛と重なって、自分の気持ちが愛に向いてると自覚させられた。


この想いを伝えたら…
そう考えてみるが、愛は俺の事をただの先輩にしか思っちゃいねぇかも、そう思うと何も出来なかった。


ましてや俺には彼女がいる。
大学の頃からの付き合いで最後の女になるかも知れねぇと思っていただけあってなかなか別れを切り出せずにいた。


そんなある日……


『はぁ、社内禁煙ってねぇよ。』


とふて腐れながら屋上に行き煙草に火をつけた。


「沖田さん、放して下さい。」


愛か?


そう思い声がする方へ行くと


『―――!!』


総司に抱きしめられている愛を見て思わず声を潜め隠れてしまった。


「愛ちゃん、君が好きなんだ。」


「…ごめんなさい、私、好きな人いるんです…」


…愛に好きなヤツがいる?


その言葉に銜えていた煙草を落としちまった。
急いで火を消し、二人の様子を見た。
総司は愛を放し


「知ってるよ、その人が誰かも。気持ちを伝えときたかったんだ。」


「…………」


「僕は諦めないよ。ほら、お昼まだなんでしょ?行っていいよ。」


そう言って愛の背中を押し扉に向かわせた。


「沖田さん…ごめんなさい。」


申し訳なさそうに深々と頭を下げ愛は社内に戻って行った。


「……左之さん、そこにいるんでしょ?覗きとはいい趣味だね。」


『ち、ちげぇよ…お前、気付いてたのか…』


「愛ちゃんに好きな人居てビックリしたの?途中で煙草落としちゃって。」


『…………』


「左之さんには関係ないよね?彼女居るんだし。」


『それは…』


言い返せねぇ自分が悔しい。
そんな俺を見透かしたかの様に総司が


「言っときますけど、僕諦めてませんから。」


そう言って社内に戻っていった。


あの日からモヤモヤしながら1週間が過ぎていった。


今日も朝から愛に会い、笑顔で


「今日も1日頑張りましょうね。」


と言われ、今日も可愛いなぁと頭を撫でると
トイレに行くと振り払われた。


俺に触られるのは嫌なのかと考えていたら、愛が戻ってきて、目が合ったのに逸らしやがる。


それだけ俺の事が嫌いなのか?そんな事を考えながら仕事を始めた。


愛の笑顔を見て元気が出たのに一気にどん底に突き落とされた気分であっという間に終業時間。


ブーブー


タイミングよくメールをくれたのは彼女からで晩飯の誘いだった。


総司とのやり取りから1週間、自分の気持ちを整理する為会っていなかった。


今日、あんな事があったがやっぱり愛が好きなんだと自覚した俺は彼女に別れを告げようと会う約束を取り付けた。


パッと前を向くと愛は既に帰ったみたいだった。


「左之さん、久しぶりー。会いたかったよー。」


そう言って抱き着いてくるコイツに今は何も感じねぇ…


『メシ、食おうぜ。』


抱きしめ返すことなく店に入った。


席に座って数分、沈黙が続く…


俺から言わねぇと何も変わらねぇと口を開いた時


「放して下さい。」


後ろの方から愛の声が聞こえた。


『わりぃ。』


席を立つと声のする方へと向かった。


そこには斎藤、千鶴そして愛の隣に座り手を握る総司がいた。


俺の中で何かが切れ、愛の腕を掴み店を出ていた。


少し困った顔で俺を見る愛。


『総司と付き合うのか…?』


お前の口から違うと聞きてぇんだ。
愛が何か言いかけた時


「愛ちゃん、大丈夫?」


後を追って来たのか、愛の荷物らしき物を持って来た総司。


俺を睨み、愛から手を放せと言われ無言で放した。
俺に話があるからと愛を先に千鶴の元へ向かわせ、怒りを表にし、襟を掴んできた。


責められるのも俺が悪い、わかっちゃいるけど愛を好きになったんだ、譲る訳にはいかねぇ。


片付けろって言われなくてもわかってる。
俺を突き放し愛の後を追った総司。


『俺はちゃんと片付けねぇとな。』


そう呟き彼女の元へ向かった。


バシンッ


『――――っ』


「これぐらいで済ませた私に感謝してよ。彼女1人店に残して出て行くなんて、ありえない。左之さんが何思ってるかぐらいわかってるよ。」


戻るなりキツイビンタをくらった。


『すまねぇ、ちゃんと話すつもりで会ったのにこんな事になっちまって。』


「どれだけ、一緒に居たと思ってんの?好きなコが出来たんでしょ?」


にっこり笑って俺を見ながら頬を触る。


「ふふっ、左之さんはやっぱり優しいね。私に気を使って別れ告げられなかったんでしょ?でもね、それって私には辛い事なんだよ?だから…別れましょ。」


『ホントにすまねぇ、今までありがとよ。』


「こちらこそ、ありがと。まぁ、私が振ったけどね。」


『そうだな。お前はいい女だよ。』


「左之さん、幸せになってね。」


そう言って俺達はその場を後にした。


『愛…待っててくれ。』


俺は愛を探しに街を走った。










=あとがき=
愛様、最後まで読んで頂きありがとうございました♪

前後編にしようと思いつつ中編でございます(^_^;)
彼女いい人にしてみました(^◇^)┛名前はありませんが…
さぁラストスパートです後編をお楽しみに(≧ε≦)
2012.6.24

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