■ 温もりを君に[前編]
今宵の月はとても大きく見える満月。
静まり返る屯所。
『今日は何事もないようでよかった。』
私は縁側に座り、安心しながら空を見上げていた。
この時代に来て数ヶ月。
攘夷派浪士の取締や屯所奇襲計画など、慌ただしかった新選組。
私は自分の状況にも戸惑いながらも斬る、斬られるという時代の彼らの心配ばかりしていた。
そんな事を考えながらふと、
『私、戻れるのかな……。』
この時代に来た頃は私がいた時代とは全く違っていて、私もいつ斬られるかもわからない。
そんな不安で凄く怖かった。
『………グスッ』
平穏な時に限って自分の状況に涙が流れてしまった。
その時、大きな温もりに包まれた。
私はこの温もりを知っている。
ここに来てから幾度となく感じている優しさ。
『……原田さん、』
「いつも言ってんだろ?一人で抱え込むなって。」
そう言いながら、さっきよりも強く私を包み込んだ。
未来から来たとか何者かもわからない私を受け入れてくれた新選組。
なかでも彼、原田左之助さんは仲間思いで情に厚い人。
そんな性格の彼は私を気にかけてくれている。
『いつもすいません。』
「俺が好きでやってんだ。気にすんな。」
そんな言葉をくれる原田さん。
彼の温もりは安心感を覚える。
優しい彼の態度が私の頬を赤くさせる。
『原田さん、もう大丈夫ですよ。』
そう言って彼の腕から離れようとした時、
「愛……、俺はお前の不安を取り除けてるか?」
いつもより少し低い声で耳元で問い掛ける原田さん。
『はい、原田さんの気遣いにはいつも感謝してます。』
そう言うと微笑みながら
「……そうか。」
そんな彼が少し寂しそうに見えたのは今宵の満月のせいかもしれない。
『ありがとうございます。』
お礼を言い、彼から離れた私。
「夜は寒い、体が冷えねぇ内に早く部屋に戻って寝ろよ。なんなら、添い寝でもしてあっためてやろうか?」
『クスクス。冗談はやめてくださいよ、原田さんも早く寝てくださいね。』
そう言いながら軽くお辞儀をして、
私は部屋に入った。
原田さん…
貴方は何故こんなに気遣ってくれるんですか?
女性に優しい貴方。
千鶴ちゃんにも同じ事をしてるんですか?
最近、貴方に包まれると私が赤くなるのは気付いてますか?
この気持ちには気付きたくなかった。
だって、私は――、
ここから居なくなってしまってもおかしくないのだから。
私は涙を堪え、彼の温もりを感じながら眠りについた。
=あとがき=
愛様、最後まで読んで頂きありがとうございました♪
次は原田sideを書きたいと思います☆
2012.5.28
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