i like u so much better when ur naked 2







 それで、今に至る。
 島は違うがいつも似たり寄ったりのダイナーで、ジン&トニックと、積み上げられた油ぎった皿とおれだ。

 心境は獲物を待ち構えるジャッカルだった。獲物は大物だった。シャンクスに誘いをかけたものの、赤髪には誘惑が多い。どの島に行っても、彼の気を引こうとする男と女でいっぱいだから、そいつらをかいくぐっておれのところに来るかと言えば、気まぐれな男のことだから、おれも確かじゃない。

 二杯目のグラスのライムをかじったところで、店の雰囲気が変わった。口の中にさっぱりとした酸っぱさが広がるのを感じながら、おれは目の端にその姿を捉えて心臓が跳ねた。

 体温が急上昇する。人の波を、シャンクスはいとも簡単にすり抜けてくる。鼓動が早くなって、催眠術のように見つめているうちに、魔法のように彼が目の前にいた。彼が入ってくると部屋の雰囲気が一瞬で変わるとか、そんな事実はどうでもいいはずなのに、おれの頭は陶酔感にくらくらなった。

 声を出す前にキスをされた。前髪が触れ合う距離で、彼が微笑した。子供っぽい、いたずらっぽいいつもの笑顔だ。一瞬で印象が変わる。誰もがつられて笑顔になる。

 彼が身体を離して、子供にするように無造作におれの頭を一つ撫でて、ウェイターを見た。

「ウィスキー」

 おれは立ち直るのに少し時間を要した。シャンクスの香りが懐かしくて、娼婦から彼より下に格付けされたという事実は、早くもどうでもよくなりかけていた。

「お前は?」

 シャンクスが当たり前のようにおれの顔を覗き込んだ。おれは突如発音の仕方を始めしゃべり方を忘れた。

「……まだあるから、いい」

 おれは何をするんだっけ?
 言うべきことはどこかに詰まってしまった。たぶん、おれとシャンクスの間のどこかだ。

 緊張してるんだ。あんたに会うと、おれはいつも緊張するんだ。
 無性に煙草が吸いたくなった。シャンクスといるときだけおれは煙草を吸う。最近気付いた。おれはもちろん持ってなかったので、隣にいたシャンクスの服を探った。

「なんだ?」

 邪魔にならないように、シャンクスが腕を広げた。ポケットの中に使い掛けのパッケージを見つけたので、一本取り出して自分で火を点けた。おれの勝手を気にした風もなく、シャンクスはテーブルに肘をついて眺めている。

「お前、吸ったっけ?」

 黙ったまま、おれは慣れない煙を吐き出した。

「……別に、あんただってただの男だ」

 脈絡のない言葉にシャンクスが一瞬目を丸くして、ちょっと吹き出した。

「ああ、そうだ」
「わかった、まあ、あんたは多少男前かもな、認める」

 先に続く言葉を期待しながら、シャンクスが面白そうに薄目でおれを見て、琥珀色のグラスを煽った。実際、いつでもシャンクスには全部お見通しなんだろう。

「でもそんなに特別ってわけじゃねえ。世間が言うほどには」

 シャンクスがにやにやしながらグラスをおいた。テーブルにできた小さな水溜まりを神経質にいじりたい脅迫感に襲われながら、おれは必死でクールを装った。

「でも」

 促すように、シャンクスが無言で距離を詰めた。強い視線がおれを貫く。緑の瞳はいつも自分が欲しいものをわかっていて、それを隠すなんてことはしなかった。
でもおれは最後まで言い切る必要があった。

「部屋に行くっていうなら、おれはかまわないぜ」

 シャンクスが笑った。おれの身体を抱き寄せてキスをした。おれもとうとう吹き出した。
 それで話は決まりだった。





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