renegade 6







FILE.6
13TH JULY AM00:17
YASOP: SMOOTH CRIMINAL


 扉が開く前から気づいていた。今回の刺客の気配の隠し方は極めて上手かったが、それは訓練されてた身につけた技術ではなく、持って生まれた才覚と、実戦で磨ぎ澄まされた習慣のようだった。しかし一流のスナイパーともなれば、相手の腕に関わらず存在を感知できて当然なのだ。
 加えて、階上の警備が手薄なことも、ヤソップは計算に入れていた。はじめから常に気を配っていた。

 地下から吹き抜けになっている二階の扉が蹴破られると同時に、ヤソップは洗練された一発を放った。しかし相手は驚くべき反射神経を見せ、間一髪で一階の手すりに飛び降りた。身のこなしに無駄がなく軽い。

 瞬間、敵と視線が合った。
 獣のような、鋭い黒い目だ。不敵に笑った。

 悲鳴が響き渡り、逃げ場を探す客たちの怒鳴り声で、ホールは一瞬にして騒然となった。

 退屈しない相手だと見て取り、ヤソップは愛用のS&Wをもう一度相手に向けた。少年期を過ぎたばかり、まだほんの若造だ。すばしっこくテラスを駆け回り、照準が合わせにくかったが、芸術とも称賛される腕前には何の障害にもならなかった。
 青年の黒いレザーが破け、腕から血が吹き出した。しかしヤソップに狙われてそれで済んだのは奇跡だ。身体のばねが常人と違う。
 そしてヤソップは悟っていた。彼は計算づく、捨て身でやっているのだ。確実にこちらとの距離を――正確にはシャンクスとの距離を縮めていた。

「ご注意願うぜ」

 青年が皮肉そうに口元を上げた。
 そして大胆にも、一階のテラスから地下ホールの中心に向かって身を投げ出した。

 シャンクスが、正面から彼と対峙していた。
 ヤソップは青年を気に入りはじめていた。
 この向こう見ずな陳入者を打ち落とすことは不可能ではなかった。しかし彼は、シャンクスに視線を向けた。レッドフォースのボスはその視線を捉え、グラスで陰った瞳を面白そうに細めた。

 弾丸のように空中で姿勢を整えた青年が、はためくコートからマシンガンを2丁取り出した。
 両手で構え、シャンクスに向けた。

 ヤソップは煙草に火を点けた。

「お楽しみを横取りしちゃ、悪ィからな」

 耳をつんざくような銃声が、ホールに響き渡った。



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