promise of another tomorrow





 (安息を見つけなきゃならない)
(ありのままでいることを やつらが許さないから)
(過ちを伝えた予言者が 恐ろしい運命を前に嘆いてたとしても)
(何が起こりうるって言うんだ?)
(兄弟におれは誓った)
(困難も、恐怖の時も涙もあるだろう)
(でもおれたちは一日一日を)
(それが最後の日のように生きるのだと)




 渡る夜風に素肌をさらしていると、ふと自分がここにいることが信じられなくなる。満たされたような、妙に覚束ないような感覚。
 どんなに足掻いても振り払えなかった血の呪縛や、欝屈した自分自身や、縛りつけるものすべてから解放されたような、確固たる地面を手に入れたような気がする。

 今なら例え倒れたとしても、受け止めてくれる地面がある。

 島が小さく遠ざかっていくのを眺める。この瞬間がいつも好きだ。一つの場所に長くとどまっていることに慣れないのは、幼い頃から変わらない。罪悪感とともに、心の底でずっと怯えながら生きてきた習慣は、すぐには消せない。
 世界的な犯罪者の隠し子として生まれ、実の母の命と引き換えに生き延びた。この世に生まれた意味や、自分が生きる価値といった戯言を、考えずにいるのは難しかった。

 しかし、海は何よりも大きい。
 彼一人の運命など、この海に比べれば他愛ないものだと今なら思える。そして彼が乗る船は白ひげの船だった。彼に生きる目標、生きる場所、生きる意味を与えてくれた男のものだった。

 彼は今、海の王者の懐で、生まれてはじめてやすらいでいた。


「エース、どうした」

 デッキで車座になっている乗組員たちの中から、ひときわ大きな声がかかった。エースは振り向き、微かに笑顔を浮かべた。

「なんでもねぇ」

 ダミ声で笑いながら、仲間が手を上げている。

「オヤジが呼んでるぜ」

 エースの笑顔が本物になった。

「ああ」

 背中にほったタトゥーが、彼に誇りを与えてくれる。彼が世界の誰より尊敬する男には、揺るぎない愛があった。子供の頃できなかったこと、大声で泣きたくなるくらいに幸福だった。

「オヤジ、何だよ。酒か?」

 一歩踏み出したところで、エースは振り返った。島はもう見えなくなっていた。

 ルフィ、お前は今どうしてる?

 あの太陽のような少年は、彼の人生を救ってくれた。弟と呼べる家族ができたことが、そしてそれがルフィだったことが、エースはとても嬉しかった。心を許せる、彼が彼自身でいられる唯一の存在だった。

 でも今は、白ひげがいた。ルフィがエースに生きることを教えてくれたとしたら、白ひげは彼に生きる価値を与えてくれた。エースは今はじめて自分の足で立っていて、生まれてはじめて、誰よりも満たされていた。

 そして不思議と今まで以上に強く、あの弟に会いたいと思った。





---------------------------

"I have to find my peace cuz
No one seems to let me be
False prophets cry of doom
What are the possibilities?
I told my brother
There’ll be problems,
Times and tears for fears,
But we must live each day
Like it's the last"
―from Michael Jackson/JAM









「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -