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FILE.4 19th JULY PM23:57 ROCKSTAR: JUST A MISFORTUNE 硬い足音がアスファルトに響き、ロックスターは振り向いた。 一筋の月の光のように、男が立ち尽くしていた。 ずいぶん若い。闇から生まれたように黒づくめ、だらりとおろされた両手には、小型のマシンガンが握られている。黒い革のタイトなカウボーイパンツが、まるで獣に毛皮があるように自然な印象だった。 気配が全くしなかった。この男がわざと、合図のように高い靴音をたてるまでは。 ロックスターは身構えた。彼にとっては代抜擢だった。新入りの分際で、カジノの3階フロアの警備を任されたのだ。名誉あることだった。地下には赤髪のシャンクスがその人いる。ねずみ一匹見逃すわけにはいかなかった。 しかし相手は攻撃してくるそぶりを見せなかった。一見リラックスしているようだったが、しかし柔らかそうな黒髪の下で、黒曜石のように鋭い瞳がじっとロックスターを見据えてくる様子は、ジャングルの中で不意に敵に遭遇した黒豹を思わせた。 警戒心の塊だ。この不敵な面構えは見覚えがあったが、彼には思い出せなかった。 ロックスターは胸元のホルスターから銃を抜いた。青年の黒い瞳がかすかに動き、まるで無頓着そうにその仕草をたどった。まだ若々しく細く伸びた手足には、小型のマシンガンさえ重たげに見える。 若者がブーツカットの黒革を一歩踏み出した。硬い靴音が響き渡ると、反響を聞いた青年は満足そうに、かすかに口元を上げた。ロックスターの脳裏に閃くものがあった。 「スペード・エースか」 彼の黒い瞳が猫のように細まった。 「ビンゴ」 次の瞬間、ロックスターの意識は途切れた。 FILE.5 |