holiday








 船に乗る夢をみた。追いかけられてたのかもしれない。

 懐かしい友人が―あれは誰だったろう?―何か彼を案じるようなことを言っていた。
 ルフィだったかもしれない。
 断片的に覚えているのに、夢の全容が思い出せない。猫の尻尾のように彼の記憶をすり抜けていった。

 ルフィ。ルフィは全寮生の学校に行った。元気にしてるだろうか?
 ああそうだ、ルフィなら元気でないはずがない。

 ベッドがいつもより柔らかかった。
 シーツがいつもより滑らかだ。

 喉が渇いていた。身体の芯から渇いている。背中が痛かった。疲れていた。

 疲れる夢だったが、悪い夢じゃなかった。もう一度眠ったら、続きを追いかけられるだろうか。

 顔に当たる光が違った。そうだ昨日はシャンクスの部屋に泊まったのだ。でも身体があたる感覚がなかった。

 昨夜はお互い帰りが遅く、重たい身体でシャワーを浴びると倒れこむようにベッドに入った。眠りに落ちるとき、疲れ果ててるのに物足りなくて、目が覚めたら誘ってみようと考えていた。
 だからエースは隣にシャンクスがいないことを悟ると、少しがっかりした。

 でも構わない。今日は休みだ、今日は1日ある。
 布団から出ている肩が寒くなかった。頬にあたる空気は心地よく柔らかい。もう夏も近いのだ。

 何かが無数に弾ける音が聞こえた。目蓋が重い。チラチラした光が角膜に刺さる。
 目を閉じてシーツに頬をすりよせ、エースはちょっと微笑した。
 シャンクスが料理をしている。こういう目覚めも大好きだった。

 シャンクスとは、彼が何を作ってるか予想できるくらいの付き合いだ。カーテンから洩れる光は力強く、今日はきっといい天気になるだろう。

 完璧な、休日の朝だ。

 エースは大きく息を吸い込み、覚悟を決めて飛び起きた。
 夢の欠片はすっかりつかめなくなっていた。


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