dune 5-1





ace : like an oasis you quench me



 シャンクスたちのキャラバンは金色の砂漠の海をゆっくりと進み、白くなった動物の骨や朽ちかけた古代の神殿跡を通りすぎた。目が痛いほどの群青が、いつでも360度彼らを取り巻いていた。

 雨が降らない土地なので常に雲一つない。過酷な環境だというのに、金と青のコントラストは天上の景色のようだった。

 太陽がまだ沈まないうちに、彼らは中継地である無人の小さなオアシスにたどり着いた。金の海原に浮かぶ緑はあまりに美しく現実離れしていて、遠くから見たエースははじめは蜃気楼だと思っていた。
 しかし近づいてみてもそれは消えなかったので驚いた。

 一面の砂ばかりだった大地に、嘘のように突然緑が繁っている。赤い実をたわわにつけた棗椰子がいくつか涼しい木陰を作り、杏や無花果の木も青々と葉を伸ばしていた。夾竹桃のピンク色の花が咲き乱れている。

 箱庭ほどの小さなオアシスだった。いくつか組み合わさった真っ白な石灰岩の隙間から、芳醇な水が湧きだしている。
 金色の砂の上に、それはサファイアのように澄んだ色で広がっていた。

 馬の背から降りたエースは、あの清清しい水に飛び込みたい衝動に駆られた。しかし荷降しと天幕の準備をしなければならない。
 作業を始めようと振り返った彼の肩を、シャンクスが思わずといった様子で叩いて通りすぎた。

「オアシスだ!」

 数人の男たちが歓声を上げながら疲れた足で騒がしく水に入っていく。肩をすくめて荷物をほどき掛かろうとしたエースの手を、ベックマンが止めた。

「ここはいいから、お前も行って来い」

 エースは当惑した。

「エース、そんなのはその辺のオヤジどもに任せておけ!」

 着衣のまま冷たい水を楽しみながら、シャンクスが呆れた声で叫んだ。人のこと言えねえだろ、と男たちが笑う。エースはうろたえた。

「でも、馬にも乗せてもらったのに……」

 奴隷の身分で、と口籠もると、ベックマンは頬を上げて煙草の煙を吐き出した。

「病み上がりの人間を歩かせはしないさ。それに、シャンクスがお前を奴隷と呼んだか?」

 エースは頭が真っ白になった。しばし言葉を失っていると、シャンクスが焦れたように叫んだ。

「エース、早くしろ。なんだ、泳げねぇのか?」

 エースは助けを求めるようにベックマンを見上げた。

「早く行ってやれ。拗ねちまうから」

 まだ当惑した顔のまま、しかし我慢できずに、美しい泉に向かってエースは跳ねるように駆け出した。




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