バタン、と強めに扉を閉めた。
だけど自分の中にずっと居座ったモヤモヤは晴れる所か増した気がした。

今は自分の物である椅子に乱暴に腰を掛けたその主は思わず出た笑みを堪えることが出来ずに笑いだす。


「アハハ、····ほんと···ムカつくなぁ。」


ガン、とひとつ机を叩いてもまたひとつ叩いても自分の拳が痛くなるだけで何にもならない。
それでも主は自分の胸に抱いたイライラの分を吐き出すように叩き続けた。


「····なんでだよ。なんであの女····」

(こんなにも簡単に預言を覆せるんだよ)

言葉にすればまた怒りがこみ上げて物に当たってしまう。

そうすれば止めろと言わんばかりに押し寄せてきた吐き気と胸の痛みに思わず倒れこんだ。


荒い息を吐いて呼吸を整える。
少し落ち着いた主はぽつり、ぽつりと言葉を吐く。

「····まぁ、····いいよ。···足掻けば良い。·····いていて苦しめば良い。····お前は僕が、僕が生かしてやったんだ····僕の為にその命····使って貰うさ·····」

主、導師イオンはそう呟いて自嘲気味に笑った。

窓の隙間から冷たい風が流れてきて主、導師イオンの体を通り抜けた。




第一章 深淵への世界



冬も終わりを告げ、徐々に暖かな風が春の到来を知らせに来た今日この頃。
ダアトにある信託の盾本部にある大聖堂では入隊の儀が静かに執り行われていた。

現ローレライ教団トップである元師モースなどを筆頭に様々なお偉い方が挨拶をするその場に私はしっかりと立っていた。


導師様から生誕の預言を貰ってから気付けば早二年。
私の人生は大きく変わっていった。
生誕の預言にははっきりと私が士官学校を経て信託の盾に所属すると詠まれていた。
それまで軍隊とは縁がなかった当時の私は物凄く困惑した。
その時は冬であり、春の入学までの時間も無かった。
なのにそこで入学をするなど書かれていた。
何かの間違いではないかとも考えたが母の後押しもあり、なんとか士官学校への入学をすることが出来た。
預言とは便利な物で、そこに書かれていたと言うだけで優遇が得られるのだ。しかもローレライ教団直属と言うのもあり、信託の盾も無下には出来ない。

そんな中途半端な入学を果たした物だからはじめの半年は本当にキツかった。
体力もなく知識もなく、覚悟もない私はどこか浮いていて体力的にも精神的にも削られていた。
そんな自分が情けなくて半年を過ぎた頃位から私は変わった。

当時困惑していた私だが沢山の考える時間もあったし、何より士官学校に入学している人達の必死さだったり、努力している姿に感化されたのだ。
純粋に私もあぁなりたい。と思った。
だから覚悟を決めて努力を重ねた。
それから半年は特にはじめの半年とさほど変わらない日々だったが年が空けて二年になった時にぐっ、と力が出来たきた。
学力も上位に位置付ける事も出来たし、武力でもそこら辺の同級生より強くなった。

それが嬉しくて私はどんどん努力を重ね、とうとう首席で卒業してしまった。

私にそんなポテンシャルがあったとはと驚いたし、母はとても喜んで二人でお祝いをした。
兄からは手紙と付属されたお祝いプレゼントを貰った。

そんな中、私は信託の盾第五師団へと配属をされ、今日ここで入隊の儀に出席をしているのだ。

士官学校で競っていた友人達もちらほらと別の部隊に配属されたり、同じ部隊にいる。緊張はないがこれからの事を考えると武者震いみたいな物が私を襲った。


(なんて血気盛んになったんだろ)

昔の自分はこんなんじゃなかったのになぁ、と苦笑いを浮かべた時、不意に聞いた事のある声が聞こえた。


「こんにちは、皆さん。ご入隊おめでとうございます」


そう言った人は導師イオンでまさかの人物に少なからず動揺してる人が何人か居た。
先輩の方々も動揺はしていないものの少なからず驚いている様子から普段はこんな場に来る人では無いのかと推測された。

しん、と静まった大聖堂に凛とした力強くも儚い導師様の声が響いている。
相変わらず綺麗なお顔をしているなぁと染々と見つめていたら不意に導師様と目があった。沢山の人が居るのに確かに導師様は私を見ている。
そして一層笑みを深くした導師様は最後の言葉を言った。

「ローレライの導きがあらんこと」

そうして視線を外した導師様は脇目も降らずに大聖堂から出ていってしまった。

その後も続けられていく入隊の儀ではあったが私はあの後から何も頭に入らなくなっていた。

確かに、最後に口だけ動いてた。いつものあの言葉を言った後に


見つけた


確かにそう動いてた。私をちゃんと見ていた。
その瞬間私は何かとんでもない事が起きるのではないかと言う漠然とした不安と恐怖に襲われた。









「やっと終わったなー」

「なんだか昨日までは実感湧かなかったけど私、信託の盾に入隊したんだなぁって実感したわ」

「そうだなぁ。まさかあの導師様からも激励のお言葉を戴けるとは思わなかったしな!」

「なぁ!なまえ!」

「·····え、何?」

「おいおい首席卒業の優等生さんが入隊の儀からぼーっとしてて大丈夫かよ」

ガハハー、と豪快に笑ってガシガシと私の頭を激しく撫でたこの人は士官学校で一年の時から同じクラスだったユミンと言う。
私よりも歳上で面倒見のいいお兄さん的な存在だ。
何度も壁にぶつかった私を一緒に乗り越えてくれた信頼できる親友の一人だ。

「それくらいつまらなかったじゃない。あなただって落ちかけてたでしょうが。あなたって大きいんだから寝たら目立つと思って私が起こしてあげたの忘れた訳じゃないでしょうね」

「う、····そうだったか?」

ゲシッと足蹴りを入れられたユミンはいって!っと小さく叫び、やめてくれよ、と巨体に似合わず弱々しく呟いた。

ふん、と鼻で笑った彼女はフェリスと言って彼女もユミン同様私と一年の時から一緒に支え合ってきた親友だ。
ユミンとフェリスは幼馴染みで一緒にダアトへと来たと言っていた。
いつもからかい合っていて仲の良さが伺える。
私はそんな二人のやり取りが好きだったし入学した時の中途半端な私の時から仲良くしてくれて嬉しかった入隊も一緒に出来て本当に心強かった。

「確かになに言ってるのか分かんなくて詠唱でも唱えてるのかと思った」

「言えてる。でもなまえ自分の所属する隊の団長の話はきちんと聞いた?」

「勿論勿論!あの強面の人!凄く筋肉ムキムキでかっこよかった〜」

「なっ!なまえはあーゆーのがタイプなのか?!」

「え?いや、タイプかと聞かれると違うけど···」

「はいはい。ユミンもちゃんと聞いた?」

「おう!勿論!あの天下のラルゴ隊長の所だせ」

「え?凄いじゃんユミン!士官学校の時からそこがいいって言ってた甲斐あったね!」

「そうなんだよ!いやぁーこれもユリア様の導きか?」

「ほんとだねー。あ、フェリスは?」

「私は第四師団よ」

「わ!あの美人のリグレット響士の所??!」

「美人ってだけじゃなくて仕事も出来るし戦闘に置いても冷静沈着で鋭い観察眼!成績優秀の無敵の女性なのよ!私も将来はああゆう女性になりたいわ」

目を輝かせて話すフェリアに私はうんうんと同意した。
男尊女卑が少なからずあるこの仕事では男性にも尊敬されるリグレット響士は私達女性兵士の中の憧れだった。

そんな事を知ってか知らず知らずか隣にいたユミンはどこか複雑そうな顔をしていた。

「お前には無理だろ。そもそもそんなに美人じゃぁな····ぐふぉ!!!!!」

クミンが鼻で笑ってフェリスを見たが、言い終わる前にフェリスから腹パンチを食らった。あれは痛そうだ。と言うか

「今のはクミンが悪い」

「ほんとだわ。」

未だに痛がって踞るクミンを私達は冷めた目で見た。

丁度その時、遠くの方から号令の合図が聞こえた為、私とフェリスはクミンに目もくれず足早に合図のあった方へと向かった。

ひでぇ奴等だ、と後で追い付いてきたクミンに言われたが二人でスルーした。





信託の盾の兵士は基本的に寮生活でその大半を訓練に費やす。作戦によって変わる隊列。戦い方。基本的戦力の向上など。

たまに実践を加えて、そこから功をあげた人間が昇進をする。皆そこに向けて努力するのだ。

私が所属する第五師団は他の師団に比べて実力主義な人間が多く、要領よく成績も優秀な人が多い。なにより自己が強くて負けず嫌い人間ばかりだ。

私はどちらかと言えば要領はあまり良くない努力で乗り越えてきたタイプの人間だ。
どうもこの第五師団とは馴染む訳もなく。
何も進展がないまま一ヶ月が過ぎていった。
最近では先輩からの圧力や同期からの嫌がらせなどで精神的にも参ってきていた。

「なんだか士官学校時代を思い出すなぁ」

「ほんと、懐かしいな」

そんな中でも士官学校時代の時から私を知っている同僚はそんな私と変わらずに接してくれる。
私がぼやくと苦笑いで答えてくれる。

「首席で卒業したから凄く期待されちゃってさ。それで空回りして最悪だよ」

「そりゃぁ誰だって首席で卒業した奴って聞いたら期待しちまうだろうよ。まぁその分、後何ヵ月我慢すればその期待もがっかりの分も忘れ去られるだろうから頑張れ」

「はぁ、なんだか悲しいわ」

期待してくれた事に応えられなくて悔しかった。
でもやっぱり私は要領が悪いから慣れるまでは失敗を普通にする。
こんなんだったら首席なんかで卒業しなきゃ良かった。


「それより今度、実践でケセドニアの方に行くらしいぜ」

「え、あの砂漠に?」

「あぁ、始めての実践にしては過酷な方らしい。なんてったって砂漠だし、なんでも手を焼いてる魔物の討伐だ。まぁ俺達は先輩のを見る形だけだろうが気を付けろよなまえ」

「う、うん。でも気を付けるのは皆も一緒でしょ」

「いや、お前先輩からも目付けられてるだろ。なに無茶ぶりさせられるか分からねぇからなちゃんと砂漠に行く前に知識とか付けとけよ」

「あぁ····成る程。ありがとう。精一杯準備しておくよ」

「そういうのは得意だろ」

「うん、·····ありがとう」

じゃあ、また明日。そう言って同僚とは別れた。

そうだ。私は努力でここまで来たんだ。無理するのは得意だ。
私はよし、と一つ気合いを入れて拳を握りしめた。

向かうは図書館だ。




バタン、と強めに扉を閉めた。
だけど自分の中にずっと居座ったモヤモヤは晴れる所か増した気がした。

今は自分の物である椅子に乱暴に腰を掛けたその主は思わず出た笑みを堪えることが出来ずに笑いだす。


「アハハ、····ほんと···ムカつくなぁ。」


ガン、とひとつ机を叩いてもまたひとつ叩いても自分の拳が痛くなるだけで何にもならない。
それでも主は自分の胸に抱いたイライラの分を吐き出すように叩き続けた。


「····なんでだよ。なんであの女····」

(こんなにも簡単に預言を覆せるんだよ)

言葉にすればまた怒りがこみ上げて物に当たってしまう。

そうすれば止めろと言わんばかりに押し寄せてきた吐き気と胸の痛みに思わず倒れこんだ。


荒い息を吐いて呼吸を整える。
少し落ち着いた主はぽつり、ぽつりと言葉を吐く。

「····まぁ、····いいよ。···足掻けば良い。·····いていて苦しめば良い。····お前は僕が、僕が生かしてやったんだ····僕の為にその命····使って貰うさ·····」

主、導師イオンはそう呟いて自嘲気味に笑った。

窓の隙間から冷たい風が流れてきて主、導師イオンの体を通り抜けた。




第一章 深淵への世界



冬も終わりを告げ、徐々に暖かな風が春の到来を知らせに来た今日この頃。
ダアトにある信託の盾本部にある大聖堂では入隊の儀が静かに執り行われていた。

現ローレライ教団トップである元師モースなどを筆頭に様々なお偉い方が挨拶をするその場に私はしっかりと立っていた。


導師様から生誕の預言を貰ってから気付けば早二年。
私の人生は大きく変わっていった。
生誕の預言にははっきりと私が士官学校を経て信託の盾に所属すると詠まれていた。
それまで軍隊とは縁がなかった当時の私は物凄く困惑した。
その時は冬であり、春の入学までの時間も無かった。
なのにそこで入学をするなど書かれていた。
何かの間違いではないかとも考えたが母の後押しもあり、なんとか士官学校への入学をすることが出来た。
預言とは便利な物で、そこに書かれていたと言うだけで優遇が得られるのだ。しかもローレライ教団直属と言うのもあり、信託の盾も無下には出来ない。

そんな中途半端な入学を果たした物だからはじめの半年は本当にキツかった。
体力もなく知識もなく、覚悟もない私はどこか浮いていて体力的にも精神的にも削られていた。
そんな自分が情けなくて半年を過ぎた頃位から私は変わった。

当時困惑していた私だが沢山の考える時間もあったし、何より士官学校に入学している人達の必死さだったり、努力している姿に感化されたのだ。
純粋に私もあぁなりたい。と思った。
だから覚悟を決めて努力を重ねた。
それから半年は特にはじめの半年とさほど変わらない日々だったが年が空けて二年になった時にぐっ、と力が出来たきた。
学力も上位に位置付ける事も出来たし、武力でもそこら辺の同級生より強くなった。

それが嬉しくて私はどんどん努力を重ね、とうとう首席で卒業してしまった。

私にそんなポテンシャルがあったとはと驚いたし、母はとても喜んで二人でお祝いをした。
兄からは手紙と付属されたお祝いプレゼントを貰った。

そんな中、私は信託の盾第五師団へと配属をされ、今日ここで入隊の儀に出席をしているのだ。

士官学校で競っていた友人達もちらほらと別の部隊に配属されたり、同じ部隊にいる。緊張はないがこれからの事を考えると武者震いみたいな物が私を襲った。


(なんて血気盛んになったんだろ)

昔の自分はこんなんじゃなかったのになぁ、と苦笑いを浮かべた時、不意に聞いた事のある声が聞こえた。


「こんにちは、皆さん。ご入隊おめでとうございます」


そう言った人は導師イオンでまさかの人物に少なからず動揺してる人が何人か居た。
先輩の方々も動揺はしていないものの少なからず驚いている様子から普段はこんな場に来る人では無いのかと推測された。

しん、と静まった大聖堂に凛とした力強くも儚い導師様の声が響いている。
相変わらず綺麗なお顔をしているなぁと染々と見つめていたら不意に導師様と目があった。沢山の人が居るのに確かに導師様は私を見ている。
そして一層笑みを深くした導師様は最後の言葉を言った。

「ローレライの導きがあらんこと」

そうして視線を外した導師様は脇目も降らずに大聖堂から出ていってしまった。

その後も続けられていく入隊の儀ではあったが私はあの後から何も頭に入らなくなっていた。

確かに、最後に口だけ動いてた。いつものあの言葉を言った後に


見つけた


確かにそう動いてた。私をちゃんと見ていた。
その瞬間私は何かとんでもない事が起きるのではないかと言う漠然とした不安と恐怖に襲われた。









「やっと終わったなー」

「なんだか昨日までは実感湧かなかったけど私、信託の盾に入隊したんだなぁって実感したわ」

「そうだなぁ。まさかあの導師様からも激励のお言葉を戴けるとは思わなかったしな!」

「なぁ!なまえ!」

「·····え、何?」

「おいおい首席卒業の優等生さんが入隊の儀からぼーっとしてて大丈夫かよ」

ガハハー、と豪快に笑ってガシガシと私の頭を激しく撫でたこの人は士官学校で一年の時から同じクラスだったユミンと言う。
私よりも歳上で面倒見のいいお兄さん的な存在だ。
何度も壁にぶつかった私を一緒に乗り越えてくれた信頼できる親友の一人だ。

「それくらいつまらなかったじゃない。あなただって落ちかけてたでしょうが。あなたって大きいんだから寝たら目立つと思って私が起こしてあげたの忘れた訳じゃないでしょうね」

「う、····そうだったか?」

ゲシッと足蹴りを入れられたユミンはいって!っと小さく叫び、やめてくれよ、と巨体に似合わず弱々しく呟いた。

ふん、と鼻で笑った彼女はフェリスと言って彼女もユミン同様私と一年の時から一緒に支え合ってきた親友だ。
ユミンとフェリスは幼馴染みで一緒にダアトへと来たと言っていた。
いつもからかい合っていて仲の良さが伺える。
私はそんな二人のやり取りが好きだったし入学した時の中途半端な私の時から仲良くしてくれて嬉しかった入隊も一緒に出来て本当に心強かった。

「確かになに言ってるのか分かんなくて詠唱でも唱えてるのかと思った」

「言えてる。でもなまえ自分の所属する隊の団長の話はきちんと聞いた?」

「勿論勿論!あの強面の人!凄く筋肉ムキムキでかっこよかった〜」

「なっ!なまえはあーゆーのがタイプなのか?!」

「え?いや、タイプかと聞かれると違うけど···」

「はいはい。ユミンもちゃんと聞いた?」

「おう!勿論!あの天下のラルゴ隊長の所だせ」

「え?凄いじゃんユミン!士官学校の時からそこがいいって言ってた甲斐あったね!」

「そうなんだよ!いやぁーこれもユリア様の導きか?」

「ほんとだねー。あ、フェリスは?」

「私は第四師団よ」

「わ!あの美人のリグレット響士の所??!」

「美人ってだけじゃなくて仕事も出来るし戦闘に置いても冷静沈着で鋭い観察眼!成績優秀の無敵の女性なのよ!私も将来はああゆう女性になりたいわ」

目を輝かせて話すフェリアに私はうんうんと同意した。
男尊女卑が少なからずあるこの仕事では男性にも尊敬されるリグレット響士は私達女性兵士の中の憧れだった。

そんな事を知ってか知らず知らずか隣にいたユミンはどこか複雑そうな顔をしていた。

「お前には無理だろ。そもそもそんなに美人じゃぁな····ぐふぉ!!!!!」

クミンが鼻で笑ってフェリスを見たが、言い終わる前にフェリスから腹パンチを食らった。あれは痛そうだ。と言うか

「今のはクミンが悪い」

「ほんとだわ。」

未だに痛がって踞るクミンを私達は冷めた目で見た。

丁度その時、遠くの方から号令の合図が聞こえた為、私とフェリスはクミンに目もくれず足早に合図のあった方へと向かった。

ひでぇ奴等だ、と後で追い付いてきたクミンに言われたが二人でスルーした。





信託の盾の兵士は基本的に寮生活でその大半を訓練に費やす。作戦によって変わる隊列。戦い方。基本的戦力の向上など。

たまに実践を加えて、そこから功をあげた人間が昇進をする。皆そこに向けて努力するのだ。

私が所属する第五師団は他の師団に比べて実力主義な人間が多く、要領よく成績も優秀な人が多い。なにより自己が強くて負けず嫌い人間ばかりだ。

私はどちらかと言えば要領はあまり良くない努力で乗り越えてきたタイプの人間だ。
どうもこの第五師団とは馴染む訳もなく。
何も進展がないまま一ヶ月が過ぎていった。
最近では先輩からの圧力や同期からの嫌がらせなどで精神的にも参ってきていた。

「なんだか士官学校時代を思い出すなぁ」

「ほんと、懐かしいな」

そんな中でも士官学校時代の時から私を知っている同僚はそんな私と変わらずに接してくれる。
私がぼやくと苦笑いで答えてくれる。

「首席で卒業したから凄く期待されちゃってさ。それで空回りして最悪だよ」

「そりゃぁ誰だって首席で卒業した奴って聞いたら期待しちまうだろうよ。まぁその分、後何ヵ月我慢すればその期待もがっかりの分も忘れ去られるだろうから頑張れ」

「はぁ、なんだか悲しいわ」

期待してくれた事に応えられなくて悔しかった。
でもやっぱり私は要領が悪いから慣れるまでは失敗を普通にする。
こんなんだったら首席なんかで卒業しなきゃ良かった。


「それより今度、実践でケセドニアの方に行くらしいぜ」

「え、あの砂漠に?」

「あぁ、始めての実践にしては過酷な方らしい。なんてったって砂漠だし、なんでも手を焼いてる魔物の討伐だ。まぁ俺達は先輩のを見る形だけだろうが気を付けろよなまえ」

「う、うん。でも気を付けるのは皆も一緒でしょ」

「いや、お前先輩からも目付けられてるだろ。なに無茶ぶりさせられるか分からねぇからなちゃんと砂漠に行く前に知識とか付けとけよ」

「あぁ····成る程。ありがとう。精一杯準備しておくよ」

「そういうのは得意だろ」

「うん、·····ありがとう」

じゃあ、また明日。そう言って同僚とは別れた。

そうだ。私は努力でここまで来たんだ。無理するのは得意だ。
私はよし、と一つ気合いを入れて拳を握りしめた。

向かうは図書館だ。


















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