・高尾があまり喋らない
・赤ちゃんみたいな高尾



高尾が風邪をひいた。

朝教室に入った瞬間、緑間に腕を掴まれてそんな報告をされて、びっくりしすぎてお弁当を入れていた手提げを落とした。やばいこれ、絶対中身ぐちゃぐちゃになった。

朝練中に様子がおかしいと思って朝練が終わった後声をかけた瞬間に倒れたらしい。緑間はもちろん先輩達や周りの部員もびっくりして慌てて保健室に連れていけば、38度を越える熱があったらしい。保健医が送って行くと言ってはいたが…とその後の言葉を緑間は濁したけれど、心配だという気持ちは十分に伝わって来た。

チャイムが鳴って仕方なく席に座ったものの、授業に集中出来るはずもなく机の下でパカパカと携帯を開いたり閉じたりを繰り返して。
2時間目が終わった頃、もう限界だ早退したい、いや早退しようと思考をぐるぐる巡らせていたら、相変わらずパカパカを繰り返していた携帯画面がメールを知らせた。

それは高尾からのメールで、メールを見た瞬間頭が真っ白になって、机にかかった鞄を引ったくって早退する!と緑間に告げていた。
緊急事態を察したのか、緑間も心配だったのか、いや多分両方かな。緑間は気をつけて行くのだよ、学校の方は任せろとだけ言って背中を押してくれた。

スーパーとドラッグストアに寄って適当な風邪薬や食材やらスポーツドリンクを買い込んだ。とにかく必死で高尾の家にあるんじゃないか、や色々な可能性なんて考えもせずに片っ端から買い込んで。財布は空っぽに近くなったけどそんな事どうでもよかった。


From 高尾和成
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―――――――――
たすけて






チャイムを鳴らしたものの高尾は玄関を開けれる状態なんだろうかいやむしろお母さんが出て来たらどうしようなどと今更色々な不安や可能性が脳内に広がる。
挨拶だとか色々な事を考えていたらがちゃりとドアが開く音が聞こえて、扉にほぼもたれた状態の高尾が出て来た。いつも勝ち気に開かれた瞳はぼんやりと見開かれ、頬も赤くなっていて。慌てて高尾を支えるように腕を掴んだ。


「あれ、なんで?」

「説明はあと。ほら家入ろ?」


声を出す事も億劫なのか緩く頷いて高尾は家に入る。昼ご飯は食べたかと聞けば食欲がないと言った高尾の様子でこれは相当に弱っているなあと思った。

ベッドに寝かせたらキッチンを拝借してお粥を作らせてもらおうと思っていたのだけれど、高尾は私の手を離そうとしなかった。離れようとすればいやいやと首を振るもので、とりあえずスポドリを飲ませたものの高尾が眠るまでは動けそうにない。

いつもからは考えられない様子の高尾に戸惑いながら緩く頭を撫でれば、高尾は一筋だけ涙を流した。つぅと頬を伝う涙がやけに痛々しくて胸が苦しくなる。


「高尾ー、どうしたの?」

「やだ、やだ。離しちゃやだ。」


離れないでと懇願するように首を振りつづける高尾の手を強く握る。頬に伝う涙を緩く撫でてからもう片方の手も添えて握りしめた。


「だいじょーぶ、離れないよ。」

「ほんと?」

「ほんと。だいすき。」


そう言って仰向けに寝転ぶ高尾を緩く抱きしめれば、高尾は嬉しそうに笑って、すうと穏やかな寝息をたてた。

いつだって、明るく優しくて、弱みなんか見せようとしなくて。そんな彼の本音が聞けた気がして不謹慎にも頬が緩んだ。離れないに決まってるのに。
普段誰にも弱みを見せない彼だから弱っている時はつい本音が漏れてしまうのかもしれない。普段からももっと、弱みを見せてくれて、甘えてくれてもいいのになあ、なんて思いながら汗で額に張り付いた髪の毛をよける。

だいすきよ、と呟けばまた、少しだけ表情が穏やかになった気がする。

起きたら、嫌がってもべたべたに甘やかしてあげようなんて思いながら大好きな人の頬を撫でた。



そんな夜には星屑だって泣いてしまう

20120925


ほんとは長編にいれる予定だった話を書きたくて書きたくて耐え切れず書いてしまった…いつかちょっと変えて同じようなネタが長編に入ります。
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